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うまくいく夫婦仲の法則 2

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「うまくいく夫婦仲の法則」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
 目指すは「夫婦仲良し、円満一家、どんな嵐もどんとこい」! 輝く夫婦、幸せな家庭を築くための秘訣(ひけつ)をご紹介します。

松本 雄司・著

(光言社・刊『二人で学ぶ うまくいく夫婦仲の法則』〈200251日初版発行〉より)

第一章 家族についてもう一度考え直そう

1「家」と「家庭」

 立派な門、その内側にはきれいな庭があって、その奥に瀟洒(しょうしゃ)な家が建っている――。

 私は、つい最近まで東京の世田谷に住んでいましたが、近所には、きれいな住宅がたくさんありました。中には、「ああ、こんな家にいっぺん住んでみたいものだ」と、ため息が出るような家もあります。どの家でも、朝になればご主人らしき人がカバンを持って出ていく。それを奥さんらしき人が「いってらっしゃい」と見送っている。勤めているところも立派な会社らしい……。そういう光景を見れば、とても幸せそうに見える家なのです。しかし、一歩、二歩立ち入って、「家庭」の中の事情を聞けば、舅、姑さんとの関係がうまくいかなくて葛藤していたり、親子の関係がうまくいかなかったり、子供の問題を抱えて悩んでいたり、夫婦の間が冷え切っていたり……と、そういうことは枚挙にいとまがないのです。一見幸せそうに見える「家」はたくさんありますが、本当に幸せな「家庭」を築いているところは、むしろ非常に少ないと言えます。

2 核家族化の光と影

 今、家庭が崩壊しているというのはいろいろな観点から言えますが、結局、「家族の絆」がなかなか結びにくい時代に来ているということです。今は「家族の時代」から「個人の時代」になったと言えます。以前は大家族の時代でした。江戸時代はもちろん、明治、大正、昭和の戦前、そして戦後も昭和30年代頃までは、まだ大家族での生活は珍しくはありませんでした。「大家族」というのは三世代、四世代の人が一緒に住んでいるということです。

 ところが戦後、民主主義の定着のためには、財閥の解体、地主制度の解体とともに、日本の封建的な「家制度」を解体しなければいけないということで、核家族化政策が強力に進められました。みんな結婚したら独立して世帯を持ちましょう、世帯を持ったら我が家を持ちましょう――という掛け声の下に、サラリーマン人口の増加とともに、「マイホームを持つ」という言葉がはやりました。「空気の良い郊外に我が家を持つ」、それがサラリーマンの大きな夢でした。やがて、それはサラリーマンだけの夢ではなくなり、商店や町工場を営む人たちも仕事場とは別に住居を構えるようになりました。かくして、庶民に至るまで「我が家」を持つということが、国民的なブームになりました。それは住宅産業の促進につながり、日本の高度経済成長の一翼を担ってくれたという点では非常に良い一面もあったのですが、その結果どうなったかというと、ほとんどの家庭は「核家族」になりました。核家族というのは、つまりお父さんとお母さんと子供という二世代家族です。

 三浦展氏は、その著『「家族」と「幸福」の戦後史』(講談社)の中で、「日本では、日本住宅公団が設立された年である1955年から1975年にかけての20年間に、核家族化が非常な勢いで進んだ」と言っています。代表的なところが「多摩ニュータウン」ですが、都会に職場が集中し若い人たちもそこに集中し、やがて彼らが結婚すると郊外のニュータウンに核家族の住宅が立ち並ぶという姿は、今や東京に限らず、どの地方でも見られる光景です。

 先日、八王子市で講演の後、その多摩ニュータウンに住んでおられる中年の男性が話してくれました。「最大時39万人といわれた人口も今は、子供たちが転出して、19万人に減り、小学校もすべて廃校になり、中学校もなくなり、高校も統廃合になろうとしているんです」「かつての憧れの町が、今や老夫婦の町になりつつある」とその実情を語ってくれました。

 ところで、私たちは今も、「自分の家は核家族だ」と思っているのですが、実は世の中はもっと激しく変わっています。今や、「核家族の時代」は過ぎ去って「個人の時代」になっています。超個人主義時代です。

 「秋深しとなりは何をする人ぞ」と詠んで、隣近所との付き合いや人情の薄くなった世相を皮肉を交えて言い合ったのはだいぶ前のことです。今では「秋深し息子は何をする人ぞ」「親父は何をする人ぞ」と詠まねばならない時代に入ってきました。それぐらい家族の中でもよく分からないという状況になっている面があります。

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 次回は、「自然に家族になれる時代は終わった/仕事場と住居の分離」をお届けします。


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