コラム・週刊Blessed Life 251
未来年表!日本の金融業界は大丈夫か?

新海 一朗

 日本の人口減少が確実視されています。このままでは、人口減少、消費減少の「ダブルの縮小」に見舞われる運命は避けられません。
 日本の未来はどうなるのか。

 このような問題意識から書かれた『未来の年表』(河合雅司著、講談社現代新書/2017年)という本があります。
 その中に、金融業界に起きることとして「IT人材80万人不足で銀行トラブル続出」という内容が記されています。

 まず銀行が直面する「壁」として、国内マーケットの縮小で収益低下に苦しむ銀行業界の姿が描かれています。
 デジタル化の波で、ネット銀行の登場が一般化することでしょう。そうなると、既存の銀行のビジネススタイルが大きく変わってくることは間違いありません。

 パソコンが「銀行の窓口」となれば、実店舗を持たないわけですから、手数料も既存銀行より割安であるというようなことが起きるのは普通のこととなります。キャッシュレス取引が社会に定着し、幅広い世代に普及する光景は珍しいことではなくなるでしょう。

 ATM手数料の相次ぐ値上げを嫌い、ネット銀行への乗り換えが進みます。これを食い止める手立ては見つかりません。
 各銀行ともインターネットバンキングサービスの拡充を図り、顧客の取り戻しに懸命ですが、ネット銀行へ流れる顧客は増える一方です。

 メガバンクを中心に、大手銀行は店舗網やATM網の統廃合を進めざるを得ません。こうした動きは銀行だけでなく金融業界全体に広がります。
 大手証券会社もインターネットサービスの台頭に押されて、実店舗の再編に乗り出し、新しい時代のビジネスの在り方を必死に模索します。

 今後の実店舗は、利益を上げる「最前線基地」から、上客との関係を深める「高級サロン」のような場所へと変化する流れが主流になっていきます。

 多くの人は、銀行や証券会社の窓口に出向くことが減ります。政府はキャッシュレス化を推進しており、国内の現金流通は激減していくものと見られます。メガバンクがATM網を維持するには、大変なお金がかかり、その負担は重くのしかかっています。

 インターネットサービスヘの移行は、既存銀行にとっていつかは着手しなければならない課題でした。
 金融業界は、従業員のリストラがコストカットの本丸であると考えていますから、金融業界では辞職する人が後を絶ちません。

 しかし、インターネットサービスの本格化といっても、「信用力」を支えるIT技術は現在全く足りていません。
 金融業界の最大の資産は「信用力」ですが、金融各社にはデジタル化に後れを取っているところが多いという現状です。

 メガバンクでさえ、いまだに通信障害が発生しています。
 今後、より強固で安定的なデジタル基盤の整備が必須となるでしょう。金融業界では先端IT人材が必要です。

 金融業界全体でこうした人材の争奪戦が激化しています。しかし、先端IT技術を扱える人材がそんなに簡単に育たないことも事実であり、問題の解決は容易ではありません。金融各社が求める人数を確保できるとは考え難いのです。

 経産省などの「IT人材需給に関する調査」では、2030年には約113万人まで増えますが、それでも約50万人不足と見られ、今後、最大約80万人不足する見込みです。
 IT技術者のニーズは大きいため、雇用は増えていますが、若者の絶対数が減っているのです。

 IT分野への就職者が増えたぐらいでは、伸びる需要に追い付きません。IT技術の進歩は速いため、先端技術を扱える人材は常に不足しがちです。
 2030年、IT人材も全てが「先端IT人材」とはいかないでしょう。金融各社が「先端IT人材」のみ採用したいと考えるのであれば、2030年の不足人数はさらに大きな数字となる可能性が高いでしょう。

 IT人材に対する日本企業の待遇は世界各国と比べて低いと見られますから、日本の金融機関をあえて選ぶという人はそう多くないかもしれません。
 IT人材の獲得に失敗し「信用力」という資産を失うと、日本の金融機関は弱体化します。それは日本経済の衰退と同義です。

 『未来の年表』が警告する日本の未来について深く考えなければなりません。