世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

独、米がウクライナに「戦車」供与を決定

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、123日から29日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 ウクライナ、東部ソレダル撤退(22日)。ドイツ・ショルツ政権、ウクライナに戦車供与決定(25日)。米・バイデン政権、ウクライナに戦車供与決定(25日)。中国春節、延べ3億人超が国内旅行と文化観光省が公表(27日)。韓国検察、野党の李在明(イ・ジェミョン)代表を取り調べ(28日)、などです。

 ドイツの戦車「レオパルト2」のウクライナへの供与を巡って、ドイツの連立与党が揺れていました。
 武器支援に積極的な中道右派・自由民主党(FDP)と環境政党・緑の党、それに対して中道左派・社会民主党(SPD)のショルツ首相は慎重姿勢を崩さなかったのです。

 最大野党の中道右派・キリスト教民主同盟(CDU)は「ショルツ政権はドイツを孤立させている」と攻勢を強めていました。
 しかし、ドイツ政府は125日、「レオパルト2」の供与を発表したのです。同型の戦車は欧州内に計2000両ほどあると見られています。

 同時に米国も、戦車「M1エイブラムス」(世界最強の戦車の異名を持つ)を31両供与する方針を発表しました。ショルツ氏は米国の供与決定を判断の条件としていたのです。

▲Image by Military_Material from Pixabay

 ウクライナ軍は春に大規模な領土奪還作戦に踏み出すと見られています。それで、敵陣を正面突破できる300両の欧米製戦車の供与を求めていたのです。
 両国の決定をもって、ドイツ、欧州各国で2個戦車大隊(計88両)が編成できる規模になり、米国を含めて100両を超える戦車群が編成できることになったのです。

 今後ドイツは、ウクライナ兵への操縦訓練を自国内で開始することとなります。砲弾や保守管理も提供します。ドイツ国防省は同日、ドイツから第一陣がウクライナに届くまで「3カ月かかる」との見通しを示しました。

 ゼレンスキー大統領は22日、ロシア軍の全土からの撤退を含む和平条件に触れながら、「今年中の勝利も可能だ」と述べました。
 ロシア、ウクライナ双方が今、大規模攻撃に向けた準備や駆け引きを活発化させています。

 ウクライナ国防省情報総局幹部は同日、欧州メディアのインタビューで、ロシアとの攻防が「春から初夏が決定的な時期になる」との認識を示しました。今は「ぬかるみ期」で十分動けず、その後の攻勢を示唆したものなのです。

 ロシアは、兵員の定員を約35万人増の150万人に拡大することを決定し、短期・小規模戦争の方針から、長期・大規模戦争を想定する旧ソ連型への軍拡に舵を切りました。その象徴が、新たな総司令官に露軍制服組トップのワレリー・ゲラシモ参謀総長を任命したことです。

 これまでのウクライナ戦車部隊の装備は、老朽化した旧ソ連製のT64や、ロシア軍より性能が劣る形式のT72のため、被害が続出していました。しかし今後投入する「レオパルト2」が搭載する120ミリ滑腔砲および使用砲弾は、T72T90125ミリ砲よりも高い装甲貫徹力を誇ります。また湾岸戦争に投入された米「エイブラムス」戦車は、「レオパルト2」と同型の主砲によってイラク軍のT72多数を一方的に撃破したのです。

 米国の「エイブラムス」はジェット燃料を使うガスタービンエンジンを搭載しており、燃費が高いため、燃料補給がウクライナ軍の負担となる恐れがあります。今後、ウクライナでは「レオパルト2」が「主役」となりそうです。

 ロシアの下院議長は22日、SNSで欧州諸国がドイツ製戦車「レオパルト2」を供与すれば、「世界的な大惨事につながる」と核兵器使用をほのめかしてけん制しました。しかし、核使用はプーチン氏とロシアの存在を保障しません。核の恫喝(どうかつ)にひるまず、今は戦わざるを得ない時なのです。



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