夫婦愛を育む 22
強さと優しさのバランス

ナビゲーター:橘 幸世

 中東で取材中にゲリラの手りゅう弾を浴び、脳に致命傷を負ったアメリカ人ジャーナリストがいました。留守を守る妻が子供たちと休暇を過ごしているところに、夫瀕死(ひんし)の知らせが届きます。夫と共著の自伝の中で、妻はその時の自身をこう表現しています。
 「その時、私の中の将軍が指揮を取り始めた」
 その表現がとても印象的でした。

 統一原理では、神は陽性的部分と陰性的部分が中和した存在であり、神の似姿に創造された人間も陽陰を有すると説いています。
 男性の中にも女性的側面が、女性にも男性的側面がありますね。これらは、強くて頼れる側面と優しく包み込む側面、と言い換えられるかもしれません。

 普段は妻として夫を支えていた彼女も、重大な家族の危機に際して、内にあった男性的側面が表に現れ、家族の臨時リーダーとして事態に対処したのでした。夫が奇跡的に命を取り留めて初めて、彼女の弱い部分がせきを切ったように溢(あふ)れ、涙します。

 女性は一般的に「強くて優しい」男性を求め、男性は、「優しくかついざという時にはしっかりしている」女性を求めるかと思います。
 「男性は内なる優しさに裏付けられた強さが表に、女性は内なる強さに裏付けられた優しさが表に出ると夫婦関係がうまくいく」とある専門家は語っています。

 目指す理想はそうですが、現実は、強さが前面に出た「俺様キャラ」の男性の中には、時に攻撃的に出る人もいます。そんな夫に優しさを見いだせない妻は、葛藤するかもしれません。優しさに裏付けられない強さ……実は、彼の攻撃性の裏には、傷つくことへの恐れがあって、自己防衛から攻撃的態度に出るのです。
 そんな夫を責めると、彼の心はさらに硬くなってしまいます。妻は、内に隠れた彼の本音を見るよう努めつつ、幸福の原則を実践していってみてください。きっとうれしそうな反応を見せてくれるでしょう(俺様キャラの方がむしろ反応が良いと思います)。
 また、妻がオドオドしていると、夫がさらに強い態度を取りがちです。彼の仮面にだまされないで、ゆったりしていれば、夫の態度も和らぐでしょう。そのためには、妻自身が自己肯定感を高める必要があるかもしれません。