夫婦愛を育む 20
配偶者が親と不仲の場合

ナビゲーター:橘 幸世

 大相撲で、若手の関取が横綱を破って金星を挙げた後のインタビュー。
 「誰にこの勝利を報告したいですか?」の質問に「あ、お母さんです。お母さんに早く電話したいので、もういいですか?」との発言に、見ていた主人も私も思わず笑ってしまいました。インタビュアーも引き留めるわけにもいかず、そこで会見は終了。力士はサッと出て行きました。私たちは彼にとても好感を覚えました。

 彼のように親との関係が良好であれば幸せですが、皆が皆、そうではありません。自分の夫(あるいは妻)が自身の親に対して好ましくない感情を抱いていた場合、妻(夫)としてどうしたらいいのでしょうか?
 例えば、夫が実の母親に対して否定的な感情を抱き、それを言葉や態度で表した場合、妻であれば、親に対してそんな態度(言葉)はいけない、何とか仲良くなってほしいと思うのは自然のことでしょう。ただ、「そんなこと言っちゃ駄目よ」「何があったの?」などと言っても、それだけで事が良い方向に向かうことはあまり期待できません。

 夫は妻に、妻は夫に、一番の自分の味方であってほしいものです。
 例えば、私がある人に対して葛藤していてそれを口にした時、かつて主人は「何か事情があるのかもしれないよ」と言ったり、その人の良い点を挙げたりして私の負の感情をなだめようとしていました。主人の意図は分かりますが、そう言われると私は自分が否定されている、責められていると感じたのです。相手をかばっている、と。

 やがて主人も学習(?)して、ただ聞いてくれたり共感してくれるようになり、時には一緒に怒ってくれるようにもなりました。そうしてもらうと私は気持ちが楽になり、自分の負の感情も消化しやすくなります(理屈や理想は言われなくても分かっているのです)。

 同様に、妻が夫と彼の親との仲を取り持とうと、「どうして嫌うの? お母さん、いい人じゃない」と言えば、「そんないいお母さんをあなたはどうして嫌っているの?」というニュアンスを感じて、夫は自分が否定されているように感じるかもしれません(妻に正されて、それを素直に受け止められる男性はまれです。仮に表面的には受け止めているようでも、内心は違います)。

 夫の態度がかたくなな場合は、まだ親との関係を改善しようという心の準備ができていないのです。妻は、夫自身がその問題と向き合えるようになるまで、待ちましょう。夫をあるがまま受け止め、良い側面に焦点を当て、尊敬し、感謝しましょう。彼の心が満たされていくにつれ、やがて心もほぐれていくでしょう。そして、ある時パカっと心の扉が開くことでしょう。その時は聞くに徹して、上手に受け止めてくださいね。