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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

日韓両首脳が30分の「懇談」

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、919日から25日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 中露、軍事協力の推進で一致(19日)。日韓首脳がニューヨークで懇談(21日)。露大統領、部分的な動員令に署名(21日)。親露派「ロシア編入投票」実施へ(23日)。米原子力空母 5年ぶりに韓国寄港(23日)。北が弾道ミサイル発射、日本のEEZ(排他的経済水域)外落下(25日)。台湾有事で北朝鮮対応優先、韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(25日)、などです。

 日韓首脳が21日、米国・ニューヨークで30分間ほど「協議」しました。両首脳にとって初めての対面での話し合いでした。

 今回は、正式会談ではなく、日本側は「懇談」、韓国側は「略式会談」と位置付けています。
 日韓両国首脳が対面で一定の時間をかけて会話するのは201912月、当時の安倍首相と文在寅(ムン・ジェイン)大統領が会談して以来のことであり、29カ月ぶりとなります。

 懇談は、公開行事に参加中の岸田首相の訪問先に尹錫悦大統領が後から訪れるかたちで実現したため、一部の韓国メディアは、「日韓首脳は日本の取材陣しかいない場所で会談した」(ハンギョレ新聞)などと強い不満を伝えています。
 野党「共に民主党」は、交渉の主導権が終始日本側にあったと指摘しました。

 懇談が実現したのは、元徴用工問題の解決が見えない状況で対話するための「苦肉の策」でした。
 日本政府は会談の条件として、韓国側が元徴用工問題の解決策を示すことを求めていました。

 一方、韓国大統領府は積極姿勢です。それは、最大の案件である元徴用工訴訟問題で、原告側が差し押さえた日本企業の資産を「現金化」する司法手続きが最終段階にあるためです。
 韓国外務省高官は、「司法がいつ動いてもおかしくない状況で、日本側への解決案の提示は『年内』でも遅いくらいだ」と危機感を強めているのです。

 米国の視点も重要な要素であり、日本政府も考慮する必要があります。米国の為政者はこれまでの数十年間、北東アジアの同盟国である日韓との関係強化を目指してきました。

 特に安倍氏の「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿い、米国は日米豪印の「クアッド/QUAD」、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS」、インド太平洋経済枠組み「IPEF」を創設するなど、中国の厳しい覇権的行動に対応するための策を講じてきたのです。

 しかし重要な日米韓の協力強化は達成困難なままです。
 尹錫悦政権の発足は、日米韓の安全保障協力を強化する絶好の機会といわなければなりません。尹氏は国民の支持を失いかねないにもかかわらず、正しい方向へと重要なステップを慎重に、力強く踏み出そうとしています。

 次期大統領として派遣した代表団を通じて岸田文雄首相に関係改善の意思を伝え、外相就任前の朴振(パク・チン)氏は2015年の慰安婦合意が公式の合意であると再確認したのです。

 さらに尹政権は、戦時徴用問題を調査・解決するための官民協議会を設立、召集しました。明らかに、原告側が差し押さえた日本企業資産の「現金化」を回避する狙いがありますが、韓国国民が納得する解決策を提示するのは非常に難しいでしょう。

 一方、日本側は「韓国側が関係改善に向けた新しい方策を示す必要がある」として突き放した対応をしてきました。
 関係決裂の発端が韓国側にあったことを踏まえれば、日本は全責任を韓国が負うべきだと考えるかもしれませんが、その判断は現状を分析すれば「誤り」です。

 目標が両国関係の改善にあり、日米韓の協力強化を見込むのなら、日本政府も一日も早い協議に臨む姿勢と努力をすべき時なのです。


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