コラム・週刊Blessed Life 20
「西郷どん」と敬天愛人の思想

新海 一朗(コラムニスト)

 明治150年に当たる2018年は、その意味を考えてもらうかのように、NHKは大河ドラマに「西郷どん」を制作・放映する企画を実施し、現在、ドラマは進行中です。近代日本の黎明(れいめい)を告げた明治維新の意味を改めて国民に問いかける企図の中に、西郷隆盛(182877)を選んだのでしょうか。
 西郷は島津斉彬(18091858)の懐刀として、その人生の多感な時期を多くの事件に遭遇(そうぐう)しながら、困難な時代をたくましく成長していきます。斉彬公の寵愛(ちょうあい)に応えることを自らの人生の全てであるとして、そのひたむきな忠義心を主君と共に時代の大いなる変革にささげていくのです。

 日本は、ペリー艦隊の外圧によって引き起こされた幕末(1853年から1869年までをいう)の激動期に突入していきます。結果的に、薩長を中心とする新政権が、186813日、江戸幕府を廃し、明治天皇の名によって王政復古の大号令を出して、天皇中心の政治を行う明治維新の新時代を開きました。
 「富国強兵」「殖産興業」のスローガンを掲げ、欧米の科学技術と産業の導入に成功した新政府は、アジア諸国の中で唯一と言っていい、欧米に並ぶ近代化を遂げました。

 西郷は「西南の役」によって有終の美を飾ることなく、人生の幕を閉じましたが、彼の残した「敬天愛人」の精神は、内村鑑三の感銘するところとなって、内村はその著『代表的日本人』の中で、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮を挙げ、西郷への親近感と敬愛の情を示したのでした。
 敬天(天を敬う、神を愛する)と愛人(人を愛する)の思想が、イエスの「神を愛せよ」「隣人を愛せよ」の教えとぴったり合致すると見たのでしょうか。大河ドラマを見ながら、「敬天愛人」の精神は見事であると、今一度、西郷への思いをはせることになった次第です。