愛の知恵袋 165
夫を頼もしく優しい男性にする秘訣

(APTF『真の家庭』286号[20228月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

良かれと思ってやったのに、最悪の事態に

 30代の女性から相談があり、「離婚すべきかどうか悩んでいる」と言います。

 彼女の話によると、夫は2歳年上の会社員。仕事はできるし人には優しい理想の男性に見えたので好感を持ち、2年ほど交際して結婚したそうです。

 最初の1年はとても幸せでした。しかし、一緒に暮らすと気に入らない点が見えてきます。帰りが遅い。話を最後まで聞かない。何か頼んでも上の空…。夫が家族より仕事ばかりを優先しているように見えて寂しさと不満が募ってきたのです。

 そんな時、「男はしっかり再教育しなくちゃダメよ」という先輩の言葉に背中を押され、ある時から夫に対してはなんでも率直に言うことにしたそうです。

 仕事面では、「もっと効率よく仕事をしたら早く帰れるはずよ」「上司に残業を減らすように言ってみたら?」など、夫の尻を叩くつもりで言いました。

 生活面では、「共働きだから家事も分担ね」と言って、食器洗い、ゴミ出し、家の修繕、車の清掃を頼みました。そして、「食器はもっと丁寧に洗って」「ベランダのごみも忘れないで」「子供と危ない遊びをしないで」と細かく注意しました。

 車で出かけた時は、「そんな服はダメ、早く着替えて」「急ブレーキはやめて」「そっちじゃないわ、こっちの道!」「時間に間に合うの?」と助言をしました。

 夫はそのたびに不快な顔をしていましたが、遂にある日、「うるさい! 文句があるなら自分で運転しろ!」と激怒し、車を降りて帰ってしまいました。

 それからは不愛想になり、何か言うと「ご意見は結構!」と言って拒否されるようになり、口も利かなくなったのです。帰宅は更に遅くなり、何かと衝突することが増えて日に日に険悪な関係になっていったので、夜のくつろいだ会話の時間もなく、ロマンチックな性生活も消滅してしまいました。

男が最も嫌がることを熱心にしていた妻

 彼女としては、「なんで怒るの?」「彼のために言ってあげているのに、何? あの態度は!」と怒りが渦巻いて、ストレスで疲れ果ててしまったというのです。

 そこで私は、いくつかの例を挙げながら、男と女の心理の違いを話しました。

 自らの体験をもとに書いた本が世界的ロングセラーになったローラ・ドイルさんが言うとおり、フェミニズムの論理は、給料、機会、発言権など職場での男女平等を実現するためには有効ですが、家庭では全く別なのです。男らしさと女らしさが良く発揮されてこそ夫婦間の親密さが深まり、喜びも倍増していくのです。

 男性は「主体でありたい」という天賦の本能を持っています。ですから、妻が夫を変えさせようとか、コントロールしようと考えて接すると必ず失敗します。

 男性は自分を信頼し、尊重し、頼りにしてくれる女性を愛おしく思い、命を懸けても守ってあげたい、喜ばせたいという気持ちを持っています。

 逆に、自分を不信し、見下し、自尊心を傷つける言動をする女性は、いかに美人で有能な女性であろうと、決して愛することができません。

 この根本的な心理を知ると、夫にこよなく愛される妻になる道が見えてきます。

 1時間ほど話を聞いた後、彼女は「はあ」と大きなため息をつき、「ショックです。私は真逆のことをしていたんですね」とつぶやきました。

頼もしくて優しい男に変わっていった夫

 私は彼女に「これからは徹底して夫を信じ、全てを任せるようにしてみてください」と話しました。彼女の家庭では、すでに妻が全てを取り仕切る習慣になりかけていたので、最初の1か月間は切り替えが思うようにできませんでした。

 2カ月目から、彼女も心の転換ができるようになって、彼に一切指図をせず、言いたい衝動はグッと抑えて、全て信じて任せるという姿勢をとるようにしました。

 「お願い、よろしくね!」と任せ、失敗があっても「大丈夫」と言い、「ありがとう!」と言い続けました。すると、彼の態度がだんだん変わってきたそうです。

 家でくつろぐようになり、笑顔が多くなり、親切にしてくれるようになりました。

 そして、半年がたったとき、彼女から電話がありました。

 「先生、奇跡が起こりました!」

 「どうしたんですか?」

 「きのうの結婚記念日に素敵なプレゼントをくれたんです。それに、夕べは3年ぶりにロマンチックな夜を過ごすことができました。新婚時代みたいです!」

 本当の賢い女性は、理屈で夫を教育しようとするのではなく、男と女の天賦の特性を知り、夫が妻を愛さざるを得ないように惚れこませる術を心得た女性です。

 女性は大きな心で包容され、守られ、愛されることに無上の喜びを感じます。

 同じように男性は信頼され、必要とされ、感謝されることに無限の生き甲斐と喜びを感じるのです。

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