青少年事情と教育を考える 209
部活動を地域に移行する

ナビゲーター:中田 孝誠

 夏休み真っ盛り。部活動に打ち込んでいる子も多いと思います。
 その部活動の在り方が、今、学校現場で大きな課題になっています。

 理由の一つは、運動部の指導の多くを教師が担当しているからです。土日も試合などで休みがないため、教師の働き方改革が叫ばれながらも、長時間労働がなかなか改善されない一因になっているといわれています。

 もう一つは、その競技の経験がない教師が指導を任されるケースがあるということです。
 経験がないスポーツを教えることは簡単ではありません。それが教師の業務の負担にもなっているというわけです。

 こうしたことから、スポーツ庁が設置した「運動部活動の地域移行に関する検討会議」が議論し、中学校の運動部活動に関する改善案を5月に発表しました。

 検討会議は、上記のような教師の負担を改善すること、そして少子化が進む中で部活動に持続可能性があるのかという二つの点を大きな課題として議論しました。
 今のままでは部活動そのものの持続可能性に疑問があると暗に示されたことは興味深い点です。

 発表された案では、子供たちがスポーツに継続して親しむことができる機会を確保して、活力ある社会と絆の強い社会を創ること。そして部活動の発展と地域での持続可能なスポーツ環境を整備して子供たちの体験機会を確保することを目標に定めています。

 そのため、来年度から3年間を、休日の運動部の活動を段階的に地域に移行する改革集中期間と位置付けて、地方自治体が推進するとしています。
 平日の活動を地域に移行するかどうかは地域の実情に応じて進めることを提案しています。

 そして、地域のスポーツ団体と学校が連携して推進する、外部指導者の質を確保する、希望する教師には地域団体での指導もできるようにする、といったことを定めています。

 ただ、こうした改善案にも課題があり、地域に子供たちを受け入れるスポーツ団体があるか、ふさわしい指導者がいるかなど、地域によって差が生じることを懸念する声もあります。

 また、運動部だけでなく文化部の活動も、文化庁で議論されています。
 この中でも、運動部と同様、来年度からの3年間を地域移行の推進期間とすることが打ち出されています。

 学校の部活動は教育の一環であることは確かです。行き過ぎた勝利至上主義には警鐘が鳴らされています。
 部活動によって子供たちが何を学ぶのか、あるいは何を得るのか。じっくりと考えてみる機会とすべきなのかもしれません。