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コラム・週刊Blessed Life 217
ウクライナ戦争と中国、北朝鮮の動向

新海 一朗

 ロシアによるウクライナ侵略は、中国の戦略にも変化をもたらしていると見ることができます。

 米国がリーダーシップを取るウクライナ支援で、世界の主要国が一致結束したのを受けて、中国の習近平体制は台湾の武力統一や尖閣諸島の占領に踏み切るのを躊躇(ちゅうちょ)し、一時的であるにせよ、武力侵攻の戦略を大きく抑制させていると言えます。
 慎重にウクライナ戦争の行方を見極める態度に終始しているように思われます。
 特にロシア軍の戦いぶりと戦果、それに苦戦や敗北の様子も含め、戦況を食い入るように見つめているのです。

 ロシアはマリウポリを陥落させる一方、ドンバス地方での一進一退の攻防は、ロシアの思うようにはいっていません。かえってウクライナの防戦が攻めに転じて善戦する姿は、ロシア軍を悩ませているのは確実で、ロシア側の戦車やヘリコプターなどの損耗、兵士の犠牲など少なからぬ被害を受けている模様です。

 その理由は、欧米が支援する武器の性能がロシア軍を上回り、ロシア側が苦戦を強いられる状況に陥っていることです。
 特に、米国が支給しているFGM-148ジャベリンの威力です。この対戦車ミサイルは、歩兵携行式多目的ミサイルとして、絶大な威力を発揮しています。

 ロシアのT-72T-90の戦車が次々に爆破されていくさまは、「ロシア軍の戦車は高性能」という評価を完全に裏切るものであり、携行式のジャベリンがロシアの戦車を餌食として、破壊し尽くします。

 中国は、軍事面でロシアを兄貴としており、ロシアから種々の兵器を購入し、それらをモデルにして国産のものを開発する方式で、軍備を整えてきました。ですからロシアの戦車が次々に破壊されていく様子は、気が気でなりません。

 武器類は、いくら高性能をうたっても、見かけが良くても、戦場における実践での証明を通さなければ使い物にならないという原則、すなわち「バトル・プルーフ(Battle Proof)」が必要です。

 ロシアの戦車や兵器は思ったよりも脆(もろ)いということになれば、ロシアから武器を購入した国々は、失望するだけです。全部、返品したいという気持ちに駆られるでしょう。

 事態は、北朝鮮も全く同じです。
 軍事面での兄貴として、ロシアを見上げているわけですから、武器類もロシアから購入したものが多く、それをベースにいろいろと改善を加えて国産品を製造したとしても、土台はロシア製と大同小異です。

 結局、中国も北朝鮮もロシアの苦戦が非常に心配になってくるのです。
 ウクライナに支給された欧米の武器がロシアを凌駕(りょうが)し、ロシアを苦しめているとなれば、中国にせよ、北朝鮮にせよ、米国とぶつかることの無謀さをいやが応でも自覚せざるを得ません。

 バイデンのアジア歴訪(520日~24日)は、米国・韓国・日本の3カ国の結束を図り、中国に対するけん制を意味する軍事的包囲網を形成する意図が明確です。

 当然、中国も北朝鮮も神経をとがらせているわけです。
 いろいろな対抗策を打ち上げ、中国も北朝鮮も威嚇的な言動が多くなることは目に見えています。

 韓国新大統領の、文政権とは180度違う親米外交の路線は、新しい韓国の在り方を内外にアピールし、親中、親北の路線に大きな変更を加えたものと捉えることができます。

 アジアにおける政治力学が、日韓米の民主主義国家の基軸連合の強化に戻りつつあることは、喜ばしいことです。