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中和新聞セレクト Vol.4
混迷する現代社会Ⅱ

 毎週2回(火、金)、さまざまなコンテンツを配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
  第4弾は「混迷する現代社会Ⅱ」(21世紀の家族を考える会)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。

 同コンテンツは『中和新聞』2020年5月から連載中のシリーズです。

第4回 コロナ禍で浮き彫りになった「家庭の大切さ」

(中和新聞 2020年11月17日 通巻1310号より)

 本シリーズでは、現代社会が抱えるさまざまな問題点を分析し、社会や家庭における正しい観点(価値観)や方向性を提示します。今回は、コロナ禍が家庭の在り方にどのような影響を及ぼしているかを探ります。(編集部)

 「新型コロナ」の感染者数が再び増加傾向に転じ、第3波の到来が懸念されています。政府もコロナ対策と経済の立て直しの両立という難しいかじ取りを迫られていますが、国民一人一人も、働き方をはじめ、ライフスタイルの根本的な見直しが迫られる1年となりました。このコロナ禍は家族の在り方にどのような影響を与えたのでしょうか。公表されている統計や意識調査などから探ってみたいと思います。

「コロナ離婚」は現実化したのか?
 春以降、新型コロナの感染拡大を受け、欧米各国でロックダウンするなど、外出禁止措置が取られました。日本も例外ではなく、緊急事態宣言下で多くの人が家庭に引きこもる状況が生まれました。閉鎖的な空間で家族が濃密な時間を過ごすことで、ストレスによる児童虐待やDVの増加が懸念され、「コロナ離婚」という言葉も生まれました。

 ただし、結果から言えば、離婚は増加しませんでした。厚生労働省が公表している月別の離婚件数を見ると、今年16月の離婚件数は98248組となり、前年から1万件以上、減少しました。特に、緊急事態宣言下の減少幅が大きく、4月、5月の2か月だけで9442組も減少しています。ちなみに、この2か月間は婚姻件数も低調で、外出禁止期間で離婚届の提出を先延ばしにしただけかもしれません。ただ、いずれにせよ離婚が劇的に増えたという事実はないようです。米国でも、今年前半の統計が出た州の多くで離婚届の提出は減少しています。フロリダでは19%減、オレゴン、ミズーリ、ロードアイランドでもそれぞれ12%の減少となりました。

 米国バージニア大学のブラッドフォード・ウィルコックス教授(社会学)は、今回のコロナ禍と20世紀前半の大恐慌を比較しています。大恐慌時にも今回と同様に離婚件数は一時的に減少し、その後、多少の揺り戻しがあったものの、最終的には20%も減少しました。著しい困難はむしろ夫婦間の絆を強める方向に作用するのかもしれません。

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■新型コロナで夫婦関係は両極化
 もちろん一部ではストレスのたまった夫婦が衝突し、配偶者にけがを負わせたり、殺害した事件も起こりました。夫婦問題研究家の岡野あつ子氏も、この期間に離婚相談が3~5割増加したと指摘。離婚予備軍が確実に増えていると懸念を示しています(「ダイヤモンド・オンライン」1017日)。

 その一方で、家事代行サービスなどを行う株式会社「キッズライン」が小学生以下の子供を持つ母親にアンケートをしたところ、コロナ禍で夫婦関係が「良くなった」と答えた割合が23.8%で「悪くなった」の14.5%を上回りました。ライターのトイアンナ氏が実施した簡易アンケートでも、今年2月以降に「夫婦仲が良くなった」との答えが30%に達し、「悪くなった」の11%の約3倍となっています。(「現代ビジネス」817日)

 米国家族調査(AFS)でも、既婚男女の58%がパンデミックで配偶者への感謝が高まったと答え、ストレスが増えた人(34%)より多数派となりました。結婚に対するコミットメントの深さも、弱まった人はわずか8%にとどまり、過半数(51%)は深まったと答えています。総じて、コロナ禍で夫婦関係は両極化しており、肯定的な変化を感じた人のほうが多かったと言えるでしょう。

 コロナ禍で絆を深める夫婦と試練を受ける夫婦を分けるものは何でしょうか。結婚問題の権威である米・ワシントン大学のジョン・ゴットマン名誉教授は、一般的に、成功する夫婦と離婚に至る夫婦の間には、環境や配偶者に対する姿勢の違いがあると指摘しています。成功する夫婦は環境や相手の行動のプラス面を見詰め、尊敬や感謝を表現するのに対して、離婚する夫婦は、マイナス面を探して不満をつのらせ、相手を軽蔑したり批判したりする傾向があるというのです。

 コロナ禍による生活の変化をネガティブに捉えるのか、それとも自分の生活を見直す機会として肯定的に捉えるのか。わずかな姿勢の違いで、夫婦関係は大きく変わるのです。そういう意味では、コロナ禍はそれぞれの夫婦が、どんな心の習慣をもって生活しているのかをあぶり出しただけかもしれません。潜在的離婚の増加を指摘した岡野氏も、現在、離婚相談に来ている夫婦は、コロナ禍がなければ定年後に「熟年離婚」していたカップルだろうと述べています。

■家庭の重要性が浮き彫りに
 新型コロナのパンデミックは、私たちの最終的な居場所が家庭であり、その基(もとい)が夫婦関係にあることを、良い意味でも、悪い意味でも浮き彫りにしました。内閣府の意識調査でも、約半数(49.9%)の国民が「家族の重要性をより意識するようになった」と答えています。

 また、里帰り出産や地方の親からの支援が難しくなり、乳児の母親の産後うつが2倍に増えました。面会制限を受けた老人ホーム入所者の認知機能が低下したとの報告もあります。これらの事例は、離れて暮らしていても家族の支えがどれほど重要であるかを示しています。

 家庭がお互いに思いやりと感謝を伝え合う場となるのか、それとも葛藤とストレスの巣窟となるのか。国内外の情勢が不安定化する中で、最後のとりでである家庭の在り方が、より強く私たちの人生の質を左右することになるでしょう。

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 次回は、「『選択的夫婦別姓』について考える(前編)」をお届けします。

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