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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

ロシアとウクライナ両首脳、停戦協議再開で合意

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、321日から27日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 安倍晋三氏と蔡英文総統が対談、中国反発(22日)。ゼレンスキー大統領、日本国会でオンライン演説(23日)。北朝鮮 ICBM(大陸間弾道ミサイル)試射、一部が日本のEEZ(排他的経済水域)内に着水(24日)。G7首脳会議開催(24日)。ロシアとウクライナ両首脳が停戦協議再開(トルコが仲介)で合意(27日)、などです。

 トルコ大統領府は327日、トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領が同日、電話会談を行い、ロシアとウクライナの停戦協議をトルコのイスタンブールで開催することで合意しました。月内にも開催される予定です。

 ロシア軍によるウクライナ軍事侵攻開始が224日。ロシア側は、ゼレンスキー政権を短期間で崩壊に追い込む計画でした。
 しかしウクライナ軍による強い抵抗により実現できませんでした。

 プーチン大統領の誤算は、何といってもゼレンスキー大統領その人でした。俳優出身で政治経験がないこともあり、軍事的脅威により心をくじくことができると安易に考えていたのです。

 しかしゼレンスキー氏は、ウクライナの主権と領土を守らんとする祖国愛により命を投げ出して戦っています。その姿がウクライナ兵士と国民の力となり、NATO(北大西洋条約機構)加盟諸国も応援体制を強化。G7は結束しSWIFT(スイフト:国際銀行間通信協会、国際決済システムのこと)からロシアの金融機関を排除し、ドルとルーブルの変換を止める経済制裁に踏み切ったのです。

 ロシアが停戦協議に合意した背景には戦況の悪化があります。
 戦闘が長期化する中、ロシア軍の物資の補給が困難になっているとの見方もあります。首都キエフに対する包囲網も狭まらず、かえってウクライナ軍がロシア軍を押し戻す所も出てきました。ロシア軍は戦い方を変えて力を東部地域に集めています。

 ゼレンスキー大統領は27日、ロシアのメディアのインタビューを受け、「ウクライナの安全、中立、非核について協議する用意がある。これは最も重要なポイントだ」としながらも、軍事力を放棄する「非武装化」については拒否する方針を明らかにしています。

 さらに28日のビデオメッセージでゼレンスキー大統領は、停戦協議での優先項目として、ロシア軍の撤退を意味する「ウクライナの主権と領土の一体性」の確認を挙げ、ロシアが求めるNATO加盟断念と「中立化」については、「実効性のある安全保障が不可欠となる」として、ロシアによる再侵攻の阻止に向けた国際的な枠組みの必要性を訴えています。

 そして、ロシア軍の撤退後に国民投票で賛否を問う考えを示しました。ロシア側の強い反発があるでしょう。
 停戦協議は始まりますが、双方が優位に立とうとすれば戦闘の激化もあり得ます。
 しかし停戦協議が再開されることが希望であることは確かです。