コラム・週刊Blessed Life 210
ウクライナ戦争は長期化か!?

新海 一朗

 NATO(北大西洋条約機構)軍高官の話によれば、ロシア軍はウクライナ侵攻で7,00015,000人の死者を出し、ウクライナ侵攻に参加したロシア軍兵士約19万人のうち、最大で計4万人の死傷者、捕虜、行方不明者を出したと報じています。

 1980年代のソ連軍のアフガニスタン侵攻で、約15,000人のソ連兵が死亡、最終的にソ連軍は撤退に追い込まれ、旧ソ連の崩壊の一因になりました。

 15,000人という死者の数は10年に及んだ戦闘の結果であったわけですが、それに匹敵する死者を、ロシア軍は、今回のウクライナ侵攻からのわずか1カ月間で出しているということになります。これは相当にひどい損害であり、この先、こういう戦い方をそのまま進めることは、おそらくできません。

▲プーチン大統領

 ウクライナ軍参謀本部の323日の発表によれば、ロシア軍の航空機101機、ヘリコプター124機、戦車517両、武装車両1,578台、大砲システム267門、多連装ロケット砲80門を破壊したと伝えています。
 もし、これが本当であるとすれば、ロシア軍の兵器関連の損害もかなり大きいと言えます。

 320日、ロシアのコムソモリスカヤ・プラウダ(電子版)の報道によれば、ロシア軍の死者9,861人、負傷者16,153人ということですから、ロシア軍の損害はもはや隠し切れないほど大きくなっていると見てよいでしょう。

 ロシアの退役将官ビクトール・ミハイロビッチ氏によれば、プーチン大統領の計算では227日に勝利演説を行う予定であったといいますから、シナリオは大きく狂ってきています。

 窮地に立たされたプーチン大統領の出口戦略についてミハイロビッチ氏は、一つ目は交渉で最低限の成功を確保する。二つ目は、より多くの軍隊と武器を動員して作戦を強行する。三つ目は、核戦争で全てを終わらせる。この三つが考えられるとし、それはプーチン大統領次第だと言っています。

 ウクライナに親露派の傀儡(かいらい)政権を樹立するという初期の作戦を達成できなかったプーチン大統領は、今、必死になって泥沼化する戦争の落とし所を見つけようとしています。

 ミハイロビッチ氏によれば、プーチン大統領は、作戦をウクライナの軍事インフラ、民間インフラの徹底破壊に切り替え、協定にウクライナが署名すれば、「降伏した」と、ウクライナの「非ナチ化」の成功をロシア国民に宣伝できるというのです。

 プーチン大統領は、322日の軍の最高幹部4人とのテレビ会議で「3万~5万人の犠牲は許容範囲だ。勝利の後に達成される目標に比べれば、何でもない」と言い放ちました。

 そして、プーチン大統領は、「勝利」の新たな期限を57日にして、「人的損害は度外視して、装備を大切にしろ」と命じたというのです。

 こういったプーチン大統領の近辺報告を知る限り、この戦争はかなり長期化する恐れがあり、犠牲者も増大する可能性が大です。
 ウクライナ侵攻の大失態の責任を問われる形で、プーチン周辺では体制内の粛清がすでに始まっているとささやかれています。

 戦争が長引けば長引くほど、ウクライナの主要都市は、木っ端みじんに破壊され、ロシアもまた、経済制裁で壊滅的な影響を被り、両国の国民は地獄の惨劇を味わうことになってしまうのです。