コラム・週刊Blessed Life 209
ウクライナ戦争の行方

新海 一朗

 224日にロシアがウクライナへ侵攻してからすでに4週間近くたっていますが、いまだ戦火は収まっていません。

 4回目の会談で、「希望はある」「可能性は少し見えてきた」とは言うものの、具体的にどのような停戦への可能性が見えたのか、はっきりしません。しかし、何らかの形で、双方が譲歩し合う空気が感じられるようになってきたということでしょう。

 ロシアのプーチン大統領がウクライナへの侵攻を命じて以降、ウクライナは激しい抵抗で首都キエフを守り続けています。このウクライナの想像以上の抵抗は、ロシアにとって大誤算であったに違いありません。

 一方、ウクライナでの陸上戦は、ロシア軍がキエフに近づくにつれて、ウクライナはより致命的な局面を迎えているとの見方も強まっています。
 イギリスの国防省は、ロシア軍は首都を掌握するために再編成を行っているように見えると分析しています。

 専門家の中には、ロシア軍は確かに強力ではあるが、ヨーロッパ最大の都市の一つであるキエフを掌握し、支配するための兵力と戦闘力が実際には不足していると見る人もいて、ウクライナ軍の士気と愛国心がロシア軍よりも勝っていると分析します。
 ウクライナの強い抵抗に遭って、ロシア軍は苦境に追い込まれているというのです。

 ロシア軍は首都を陥落させることができずに撤退するのか。あるいは、激しい市街戦で大損害を受けて、引かざるを得ないのか。
 はたまた、ロシア軍の総力戦の前にウクライナ軍は抗しきれず、全滅させられるのか。プーチン大統領に残された選択肢はどこにあるのか。ゼレンスキー大統領の一歩も引かない抵抗戦はどこまで持つのか。
 この戦争の天王山ともいえる「キエフの攻防」は、いかなる結末になるのか予想し難いものがあります。

 今回のウクライナ戦争におけるロシア側のシナリオの狂いは何かといえば、非常にスピリチュアルな要因が挙げられます。

 それはゼレンスキー大統領の命を懸けた愛国心です。
 2月25日にビデオ演説で、彼が「私は首都にとどまる。私の家族もウクライナにいる。私の子供たちもウクライナにいる。私の家族は裏切り者ではない。われわれはみんなここにいる。われわれの独立、われわれの国家を守る。ウクライナに栄光あれ」というメッセージを国民に流した時、ウクライナ国民は大統領の気迫と愛国心を見て奮い立ったのです。
 このゼレンスキー大統領の逃げないで戦う姿を見て、EU(欧州連合)の首脳たちも態度を変えました。

 ドイツのショルツ首相は、ウクライナへの支援に気が進まなかったその気持ちを一転させ、1000台の対戦車兵器と500発のスティンガーミサイルをウクライナに提供すると表明しました。

 士気においては明らかにウクライナの方が勝っているのです。これが、ロシアが手こずっている理由です。
 しかも、ロシアは兵たん面(人員・兵器・食料などの後方支援体制)で苦戦していて、作戦がうまくいっていないことが明らかです。

 すでに、300万人を超す難民がポーランド、ルーマニア、モルドバなどの近隣諸国へ逃れています。大変な惨劇です。
 3月いっぱいで戦闘が終わる気配もなく、4月の半ばごろまでに停戦協定に持ち込めれば良しとしなければならない、といったところです。
 それ以上に長引けば、犠牲は二つの国にまたがって拡大するのみで、何の利益にもなりません。