青少年事情と教育を考える 191
深刻な「教師不足」

ナビゲーター:中田 孝誠

 学校現場では「教師不足」が問題になっています。
 文部科学省が初めて実施した調査(1月に公表された「『教師不足』に関する実態調査」)によると、全国の公立学校の教師不足は昨年5月の時点で2,065人に上っています。

 これについて末松信介文科相は「危機感を持って受け止めている。学校における働き方改革が一番の優先施策である」と述べています(「教育新聞」2022年2月17日)。
 教師不足の内訳は、小学校は979人、中学校は722人、高校159人、特別支援学校205人です。

 学校数では、小学校が794校(全体の4.2%)、中学校は556校(同6.0%)、高校は121校(同3.5%)、特別支援学校は120校(同11.0%)でした。
 小中学校では20校に1校程度で教師不足が起こっているわけですから、決して珍しいことではありません。

 教師不足になると、学級担任が足りなかったり、授業ができなくなったりするケースが出てきます。
 小学校で学級担任が不足していた学校は367校。これらの学校では、主幹教諭や教務主任、少人数指導など別の役割を予定していた教員が代わりを務めました。

 また、特定の教科の授業を担当する教員がいないケースも、中学校で16校、高校で5校ありました。

 このような教師不足が起こる原因には、産休や育児休業の増加、特別支援学級数の増加、病気休職者数の増加などがあります。
 通常は代わりに学級担任や授業を担当する臨時任用教員の必要人数を確保しますが、それでも予想外の欠員が出て現場が混乱するケースもあるようです。

 一方、教員採用試験の倍率低下が続いていることも、大きな課題です。
 昨年度実施された公立学校の教員採用試験の倍率は3.8倍と前年度の4.0倍から下がり、受験者数も3,700人余り減少しました。中でも小学校は過去最低の2.6倍でした。

 これは、第二次ベビーブーム時に大量採用された教員が退職する時期になったことで採用者数が増加したことが大きな要因です。しかも、倍率が3倍を下回っていることで、教員の質の低下が不安視されています。

 学校の教師だけでなく、保育士、児童福祉司など、子供に関わる専門的能力を持つ人材の不足は深刻です。一方で少人数学級の実現やICT(Information and Communication Technology/情報通信技術)教育の推進、「個別最適化の学び」など、新しい教育方針への対応も必要になっています。

 働き方改革を進めることはもちろんですが、人材の育成はそう簡単にできることではありません。教員としての資質と公的意識を持った人材が育つ環境(学校の研修の充実、大学の教職課程の充実など)の整備につながる改革が望まれます。そして子供を育てる家庭の姿勢もますます重要になってくると思われます。