世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

台湾選手団、北京冬季五輪開閉会式の不参加決定

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、124日から30日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 米国防総省、米軍8500人をNATO(北大西洋条約機構)からの要請に備え待機すると発表(24日)。北朝鮮が巡航ミサイル発射(25日)。北が短距離ミサイル2発発射(27日)。台湾、北京冬季五輪開閉会式不参加を決定(28日)。北がミサイル発射(ロフテッド飛行)今年7回目(30日)、などです。

 今回は中台関係です。
 いよいよ24日に北京冬季五輪が開幕しますが、台湾当局は128日夜、選手団全員が開会式と閉会式には参加しないと発表しました(2022年1月31日時点)。

 不参加を決定したのは、これまで台湾は「中華台北」の名称で五輪に参加してきましたが、今回中国が「一つの中国」を想起させる「中国台北」と台湾選手団を呼ぶ恐れがあると判断したためです。

 126日、中国国務院(政府)台湾事務弁公室の報道官は「『中国台北』の選手団一行はすでに参加登録を済ませた」と定期記者会見で語ったのです。「中華台北」なのか「中国台北」なのか、という問題です。

 国際社会の大半から「国家」として認められていない台湾は、これまで五輪参加に際して「台湾」の名称を使用できませんでした。代わりに「チャイニーズ・タイペイ(中華台北)」の名称で参加が認められてきたのです。中国も自国開催の2008年の北京夏季五輪の際は台湾を「中華台北」と呼んだ経緯がありました。

 ところが26日、中国当局は「中国台北」とあえて表現したのです。台湾で対中国政策を担う大陸委員会の当局者は、翌27日の記者会見で「中国が台湾代表団を『中国台北』という間違った名称でわざと呼んでいるが、台湾人の恨みがさらに増すだけだ」と強く反発しました。

 北京冬季五輪を通じて、中国当局が「台湾は中国の一部」との政治宣伝を行うことへの懸念が大きくなりました。台湾メディアの関係者は、「中国側との意見の隔たりが大きく、選手団は最終的に(開会式を)欠席せざるを得ないのではないか」との見方を示していたのです。

 台湾選手団は総勢15人で、米国やスイスから北京入りする選手もいます。台湾当局は、選手の疲労や新型コロナウイルスの感染リスクを考慮し、競技で実力を発揮させるためと説明しました。閉会式不参加については多くの選手がすでに北京を離れているためとしています。

 習近平主席は14日、金メダル獲得に向けた「至上命令」といえる言葉を発しています。
 当日、北京市内のトレーニング施設を訪れて、選手やコーチらを前に「われわれは五輪・パラリンピックを主催するだけでなく、好成績を残す努力をしなければならない。教義・道徳・風格の全てで最高のメダルをつかむのだ」と檄(げき)を飛ばしました。

 習氏にとって北京五輪は、秋の党大会に向けた重要なステップとなるのです。