コラム・週刊Blessed Life 202
ロシアのウクライナ侵攻はあるか

新海 一朗

 ロシアのウクライナ侵攻はあるのか。
 現在、世界のメディアが注目している問題が、ロシアのウクライナ侵攻です。ロシアはウクライナとの国境沿いにロシア軍10万人以上を集結させていて、ただならぬ気配です。

 これはウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟への阻止を図る軍事的圧力に過ぎないのか、それとも、2月の氷の張った時期(氷結期には戦車の移動が容易でロシア軍にとって絶好の時期)のタイミングを見て一気にウクライナへの侵攻を実行に移すのか。
 ここにきて、国境沿いへのロシア軍の大部隊の結集は尋常でないと欧米メディアは騒ぎ立てている状況です。ロシアのウクライナ侵攻はあり得るという報道が目立ちます。

 2014年春、ロシアがウクライナの一部であるクリミア半島を突如、ロシアに併合させた軍事侵入は記憶に新しいのですが、その後も、ウクライナ東部のドネツクなどでは、ロシア回帰の動きがあり、ウクライナの支配から離れようとする内紛も起きています。

 プーチンの意図がどこにあるか。推測するしかありませんが、一つの大きな原因は、米国の姿勢です。
 バイデン政権がアフガニスタン撤退(2021830日、アフガン駐留終了)を決めたことは、ロシアや中国から見れば、弱い米国、脆弱(ぜいじゃく)なバイデン政権と映っており、ロシアはウクライナを、中国は台湾を、バイデン政権の期間中におのれの支配圏に引き入れる目標を達成したいと考えてしまったとしてもおかしくありません。

 強いトランプ政権の時には、さすがにロシアと中国は手も足も出なかったのです。米国の様子をジッとうかがっているのが中国、ロシアの両国です。

 特に、ウクライナは、EU(欧州連合)27カ国とロシアとの間に挟まれた「緩衝地帯(バッファゾーン)」であるため、ウクライナがEU加盟を果たし、NATO軍まで置かれるようなことになれば、ロシアの国家的運命(専制主義的な特徴を持つ民主主義、あるいはロシア特有の強い愛国心とプライド)が危機にさらされるというくらいの危機感が、ロシア国民およびプーチンの心理としてはあると見なければなりません。
 ウクライナのEU化は絶対に許さないというのがプーチンの立場であるはずです。

 カザフスタンの騒乱鎮静化の支援のため、すかさず治安部隊を送り込んだプーチンは、110日に開いたCSTO(集団安全保障条約機構、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6カ国)の緊急首脳会議で、「われわれは『カラー革命』を容認しない」と述べました。

 この発言の意味は、外部勢力(欧米が仕掛けているという意味)が騒乱を起こし、政権転覆を試みていることなど、断じて許さないと言っているのです。

 ウクライナで起きた2004年の「オレンジ革命」(不正選挙への抗議によって、親露政権を倒し、再選によって西側寄りの大統領を選出)を念頭に置いているのですが、カザフスタンの騒乱でも西側勢力が暗躍していると断言しているのです。
 ウクライナの二の舞いをカザフスタンでも起こす(西側をまねた民主化)ことは断固阻止するというのが本音です。

 こう見ると、EUとロシアの間には異なる価値観の高い壁があり、簡単に埋まりそうにありません。それは、米国と中国の間でも同じです。
 ロシアは専制主義的な価値を捨てません。プーチンは必死にもがいています。ウクライナを取り戻したいのが偽らざる思いでしょう。