神様はいつも見ている 13
~小説・K氏の心霊体験記~

徳永 誠

 小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」をお届けします(毎週火曜日22時配信予定)。
 世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。

第1部 霊界が見えるまで
13. 神は全てを知っている

 父の交通事故がきっかけで母が神懸かりになり、家は“教会”になっていったが、私自身は神様に仕えるというようなうさんくさいことよりも、友達と遊び回ったり、外で駆け回ったりしたかった。ガキ大将のようにしていたかった。

 私のそのような性格はおそらく父から受け継いだものだ。父は短気でけんかもよくした。正義感が強く、間違ったことを許すことができない人だった。

 と同時に、負けず嫌いでもあった。酒を飲みながら、「けんかに負けるなよ」と常に私たちは父から言い聞かせられていた。
 それだけではなく、勝負事には絶対勝つこと、運動会のリレーなどの競争では1等賞を取ることを父は命じ、そのための作戦や心構えを教えてくれた。

 私は負けず嫌いで頑固な一面を持ち、自分の目で確かめ、自ら体験したことでなければ簡単には信じない子供だったのだ。

 体を動かすことやスポーツが大好きで、特に野球に熱中し、将来はプロになりたいとまで考えていた。
 家の中では神霊との生活が当たり前ではあっても、学校生活や外では普通の生活をしたかったし、普通の人生を生きたいと思っていた。

 そんな私の考えを変えたのは、やはり母の神懸かりを通して体験した不思議な出来事だった。

 ある日、母から「お勤めが終わるまで寝ないで待っていなさい」と言われた。
 しばらくすると、母が私たちを呼んだ。

 灯明をともした教会の部屋で、母は待っていた。
 母は神妙な顔つきで私たちの顔を見た。
 その瞬間、神様が母に降りた。

 「テツオ(私の名前)、おまえは今日、こんなことをしたやろ」

 母に入った神様は、私の今日一日の行動を、何をしてきたかを、一つ一つ、ことごとく指摘した。

 「どや? 驚いたか?」

 全てそのとおりだった。
 しかし、神様の言葉だとはとても信じられなかった。
 どうして私の一日の行動の一つ一つを知っているのか…。

 これは神様ではなく、母が私の友達に聞いて、神様が言い当てたかのように見せかけているに違いないと私は考えた。

 親の言うことを聞かず、自分の好き勝手にやっていた私をしつけるために言っているのだと理解しようとした。

 私は神様が乗り移った母の言葉を聞き流した。聞き流したかったのだ。

 1週間後、私はまた母に呼ばれた。
 そして神様が母に降り、前と同じようにその日の私の行動の一つ一つを言い当てた。

 「おまえは、わしの言うことを信じておらんだろ?」

 私は黙り込んだ。

 「しょうもないやっちゃな! だが、わし(“神様”)はいつもおまえを見てるで」

 この日は出来事を指摘するばかりでなく、「その時、こう思ったやろ。あの時、ああ思ったやろ」と、心の動きや感情までも言い当てたのだ。

 これには私も驚いた。

 行動は見れば分かるものだ。外から見えるものだからだ。しかし見えない心の中の思いまでは分かるはずがない。なのに心の中の思いまで言い当ててしまう。

 どうして心の中のことまで分かってしまうのだろう。

 これは絶対に母にできることではない。
 神様が見ていること、神様が私の心の中まで知っているということを信じざるを得なかった。

 私が見えない神様を信じるようになったのは、そんな出来事がきっかけだった。
 神様は母の口を通して、最後にこう語った。

 「神様、いつも見てるで。いつも共にいるで」と。

 私は今でもこの言葉をよく覚えている。

 「そうなのだ。神様はいつも私の行動を見ている。心の中まで見ているのだ。…これでは、悪い事はできんな」

 この時、私はつくづくそう思ったのである。

(続く)

---

 次回は、「神と共に生活する」をお届けします。