コラム・週刊Blessed Life 196
日本の経済安全保障を急げ!

新海 一朗

 今、政治の課題として、これまであまり聞きなれなかった「経済安全保障」という言葉が聞かれるようになり、政府はこれに取り組む姿勢を闡明(せんめい)しています。

 そもそものきっかけは、コロナ禍で判明した中国への依存度です。
 半導体から防衛装備品、マスクなどの医療品まで中国の手中にあるという現実を思い知らされ、愕然(がくぜん)たる思いを政治家も国民も抱くようになったのです。
 官民一体で、中国への依存を打破する「経済安保」が必要との認識が急速度に高まりました。

 岸田政権が経済安保に取り組み始めた背景には、米国と中国の対立が先鋭化してきていることがあります。
 与党(自公連立)は、経済安保推進法(仮称)の制定を目指していますし、防衛省は今年、経済安全保障情報企画官を新設しました。

 政府は今後ますます、激増すると見られるサイバー攻撃を防ぐ対策が必要と考え、対策を講じる方向で動いています。国の先端技術の防御、農産物の特許侵害などの対処策は、緊急を要しています。とにかく、激増するサイバー攻撃を防ぐことが喫緊の課題です。

 日本国内で観測されたサイバー攻撃数を見ますと、2016年には1億2810件であったのが、2020年には3億7010件に増加していますから、大変な増加です。いいように狙われている日本の政府機関、官公庁や優良企業などであり、機密性の高い情報が盗まれていることは、言わずもがなの実態になっていると言っても過言ではありません。

 各所に専門要員を配備、充実させていく方針が打ち出されていますが、時間を置かずに実行してほしいと思います。
 東芝が、三分割化を計画していることが明るみに出たのも、経営危機に陥って、海外ファンドを受け入れたことが発端となって分かったことでした。相手の正体を見極めなかった東芝と経産省の落ち度です。
 危機管理の甘さが紛れもない原因であるという以外にないでしょう。今こそ、経済安保を実行しなければ、わが国の未来はありません。

 外国企業と資本提携するときには、事前の周到な調査と準備が必要です。
 日本の企業は対外交渉の基本姿勢として、「共存共栄」「互恵平等」「相互信頼」を重要視してきました。それは間違いではないのですが、外国の企業から見れば、このような姿勢が無防備と映って付け込みやすいということになりかねません。やはり、一定の用心深さと周到な調査などが欠かせないと考えなければなりません。

 最近、日本の金融機関や企業を利用したマネーロンダリング(資金洗浄)が激増している事実が判明しています。
 テロ組織などにお金が流れるマネーロンダリング対策を審査する国際組織「金融活動作業部会」(FATF)の調査によれば、日本のマネーロンダリング対策の現状は不合格の水準であるとの判定です。

 「法務省と金融庁、金融機関は2022年1月から非上場を含む株式会社に、大株主に関する情報を法務局に提出するよう促す。マネーロンダリング(資金洗浄)に関わった不審な企業や人物が大株主になっていないか点検する。対象は企業の大半となる約350万社にのぼる」(日経新聞2021年10月27日付記事)という報道もあります。

 この問題で、これまで見て見ぬ振りをしてきた日本政府も、やっと重い腰を上げたのです。
 テロや犯罪防止、技術情報流出防止のためにも不透明な大株主(外国勢など)の動きを強く監視する必要があります。

 経済安保の最大の狙いは、対中国問題です。
 コロナ禍で、マスク、人工呼吸器、さらには安全保障上の戦略物資に至るまで、日本がどれほど中国のサプライチェーン下に置かれ、中国に握られていたのかという実態が明らかになりました。

 これでは、国を守れません。戦わずして中国の手に落ちるわが国の状態です。日本は目覚めなければなりません。