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トムヤムクンを召し上がれ
バンコク生活記②
ビニール袋で何でもテイクアウト?!(後編)

 2013年から2014年まで『トゥデイズ・ワールド ジャパン』に掲載された懐かしのエッセー「トムヤムクンを召し上がれ バンコク生活記」を、特別にBlessed Lifeでお届けします!

 筆者のアルンローッゴーソン真理子さんは、6500双のタイ日家庭です。

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 テイクアウトしたトムヤムクンなどのスープ類や、お粥などを自宅や会社まで持ち帰るとします。トムヤムクンが、ゆらゆらと揺れながら自分の足に当たると、熱〜い思いをします。さらに、被害は自分だけに終わらないのです。

 出勤時の満員バスの中。朝食としてタイ人が好んで食べる中華風お粥を入れたビニール袋をぶら提げている人が、もし、隣に立っていたとしたら……。もう最悪です。

 その袋が間違って私の足に当たろうものなら、やけどしそうなくらい熱〜い思いをしなければなりません。そんな経験は一度や二度の話ではありません。ちなみに、お粥で使用しているタイ米は日本米より細長いのですが、炊く前に細かく砕いてあります。

▲バス停で。手前の人は、朝食のお粥を持っている。その後方でピンクのエプロンをしている人はコーヒーをデリバリー中

 さて、自宅でスープ類を器に移すときが、これまた慣れるまで大変なのです。

 以前、ラーメンを買ってきたとき、まず麺と具をビニール袋から無事に器に移し、次にスープが入ったビニール袋の厳重に縛られた輪ゴムを外し、「さあ〜、器に注入!」というとき、手元が狂ってスープのほとんどをテーブルの上に……。このようなハプニング続出でした。

 見かねた夫がコツを教えてくれたおかげで、今ではちゃんとスープを移せるようになりました。うまくできるようになったときは、「やっと、タイ人の仲間入りだ!」なんて思いました。

 ただ、ビニール袋をふんだんに使っているタイに住んでいると、先進国では「エコ、エコ」と言っているのに、こんなことでいいのだろうかと思っていました。

 すると、ある年からエコバッグの使用が叫ばれるようになったのです。日本と比べれば、随分後れているように思いますが、「地球温暖化(パワ ローク ローン)」というタイ語も、今では頻繁に耳にするようになりました。

 小学生の娘の夏休みの宿題に「エコに協力するためのリサイクル工作」という課題が出たりして、学校教育にもエコが取り入れられ、タイもそのような面では先進国に近づいているのかなと感じます。

 私がタイに来た19年前には、既に日系スーパーが存在し、豚カツやコロッケ、かき揚げなどの揚げ物も置いてありました。その傍らに豚カツソースがビニール袋にかわいく入っているのを見つけると、タイの食文化と日本の食文化が、うまくマッチして「タイ日友好!?」を体感します。

 今や、在タイ日本人は4万人を超えています。そのせいか、日系スーパーやラーメン屋も数知れず、日本食はハイソ(ハイソサエティ=富裕層)なタイ人にも人気なようです。

 最近は韓流ブームも合流し、家の近くには韓国料理店が進出。デリバリーで早速キムチチゲを注文したら、やっぱりビニール袋で運ばれてきました。その三つの国の文化が流れる光景を見ながら、ふと、実体の天一国という国ができたとき、果たしてタイの「ビニール袋文化」は生き残るだろうかと余計なことを考え、一人で笑ってしまいました。

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(この記事は、『トゥデイズ・ワールド ジャパン』2013年6月号に掲載されたものです)