コラム・週刊Blessed Life 193
米中首脳会談の成果は?

新海 一朗

 日本時間の11月16日、米中首脳会談がオンラインで3時間余りにわたって行われました。両国は、問題解決のために協調の努力はするものの、考え方の根本的な相違は「大きな溝」として残されたままとなりました。

 米国のバイデン大統領と中国の習近平主席の話し合いは、両国の関係の基本的なスタンスの取り方の表明、すなわち、米国は中国との競争はするが、それが衝突を生まないように回避する責任があるとし、中国は米国との協力、具体的には、相互尊重、平和共存、ウインウイン(Win-Win)の関係を基調とすることを表明しました。

 人権問題では、チベット、ウイグル、香港など、米国は中国に強く改善を求めましたが、中国は中国国内の問題に米国は干渉するなと警告を発し、米中間において人権問題で歩み寄る姿勢は全く見られませんでした。

 安全保障問題、特に台湾問題については、両国は武力衝突しかねない大きな見解の相違を持っていますが、バイデン大統領は一方的な現状変更に強く反対し、習近平主席は台湾独立勢力がレッドラインを突破すれば、断固とした措置(武力侵攻)を取ると言明しました。

 経済問題では、米国は自国の労働者と企業を中国の不公平な通商慣行から守る姿勢を強調し、中国は米国政府が中国企業に圧力をかけることをやめるように忠告しました。

 気候変動対策での協力の模索などを持ち出しながらも、中国の「南シナ海の占有」状態、それに対抗する米国の「自由で開かれたインド太平洋戦略」問題など、非常にセンシティブなテーマは、懸念事項として取り上げる程度で、深入りは避けましたが、それほど、米中間には多くの解決すべき課題が山積しているということです。

 このような首脳会談の結果は、共同声明のようなものを一切発表しなかったという点で、お互いがどういう考えを持っているのか、相互に確認し合うにとどまり、首脳会談は終わりました。会談前からおおよその予想はされていたことです。

 現在の米国は、民主党、共和党、どちらの政党に限らず、米国民の反中感情を無視できない政策の遂行が求められている状況にあります。米国の対中感情は非常に悪くなってきているのです。

 2005年には、米国民の対中感情は、「好ましい」が43%、「好ましくない」が35%でしたが、2020年の中国発の新型コロナの世界的パンデミックが起きると、対中感情は悪化の一途をたどり、対中感情は「好ましい」が22%にすぎず、「好ましくない」が73%に跳ね上がっています。経済的に中国にのめり込んできた分、アメリカの挫折感が増大しました。

 これでは、バイデン大統領が、オバマ政権の副大統領時代から、あるいはそれ以前から親中派であったとはいえ、中国に甘い政策を取れば、たちまち、米国民の不評を買う運命になるのは目に見えています。おいそれと、親中的な姿勢を取るわけにはいきません。中国はあまりにも米国の利益を脅かし続けているのです。

 そういう観点から、米国が今後、親中的になることはなく、中国共産党(共産主義、独裁的全体主義)との闘いにおいて、雌雄を決する状況に追い込まれていることは明白な事実であると言えるでしょう。