コラム・週刊Blessed Life 192
本質的な意味でわれわれの時代はどういう時代なのか

新海 一朗

 世界の宗教人口の統計(2016年度)を見ますと、キリスト教24億4800万人(32.9%)、イスラム教17億5200万人(23.6%)、この二つだけで、世界の宗教人口の56.5%を占め、およそ3人に1人がキリスト教徒、5人に1人がイスラム教徒となっている計算です。

 続いて、ヒンズー教10億1900万人(13.7%)、仏教5億2100万人(7.0%)となり、以上の4大宗教で、77.2%の宗教人口ですから、大方、80%が四つの宗教で占められています。残りの20%あまりがさまざまな宗教です。影響力の強いユダヤ教は1450万人(0.2%)にすぎません。

 特に目立つのはイスラム教の増加です。1995年時点でキリスト教は33.7%、イスラム教は19.2%であったのが、2016年時点では、キリスト教32.9%で、1995年から0.8%の減少、イスラム教23.6%で、1995年から4.4%の増加です。キリスト教は減少傾向、イスラム教は増加傾向というのが現実で、これにはイスラム圏の人口爆発が関係しています。

 文明の核となるのが宗教であるという見方を示したアーノルド・トインビーですが、それでは、宗教人口が増加する原因は何か。言い換えれば、宣教、布教の成功要因は何かということを考えてみなければなりません。

 上述しましたように、現在、イスラム教の増加が著しいのですが、これは人口爆発に関係していますから、直接的に、布教活動の仕方の善しあしに関係しているとは言い難いものがあります。

 歴史的に見ると、宣教に熱心であったのは、やはり、キリスト教であったと言わざるを得ません。キリスト教信徒たちのどういう精神が布教の情熱につながっていたのでしょうか。
 パウロが「ローマ人への手紙」(新約聖書)の中で述べた言葉が、キリスト教の聖職者たちを大きく突き動かし、その聖職者たちが語るパウロの言葉に、信徒たちの心が動かされ、宣教の意欲をかき立てたという側面が大きかったのです。

 「自分の口で、イエスは主であると告白し、自分の心で、神が死人の中からイエスをよみがえらせたと信じるなら、あなたは救われる。なぜなら、人は心に信じて義とされ、口で告白して救われるからである」(ローマ人への手紙 第10章9~10節)という聖句の力です。

 すなわち、心に信じて義とされ、口で告白して救われるというのですから、信じただけでは駄目だ、口で告白して初めて救われるという部分が聖職者および信徒たちの心に刺さったのです。

 口で人々に言い表して救われるというのが、伝道の神学、宣教の哲学になったのです。
 信じているところを人々にはっきりと語ることが救いにつながる、すなわち、人々に伝えなければ救われないという「救いのメカニズム」を意識したことで、キリスト教の宣教が力強いものになったのだと解釈してもよいでしょう。

 キリストの再臨が起きる時、その時の宣教は救いの完成を告げる宣教のみ業が始まる時代となります。
 あらゆる方法を通じて、再臨の恵みを伝える宣教が展開されなければなりません。ただ政治や経済によって理想の世界をつくるというのではなく、原罪の清算という根本問題を掲げて行われる歴史的な宣教が、あらゆる宗教の壁を超えて人類全体に広がっていきます。

 われわれの生きる21世紀はそういう時代であることを心に刻みたいと思います。