世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

4回 北朝鮮、事実上の「核保有国」表明?

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 「世界はどこに向かうのか ~情報分析者の視点~ 」は、毎週火曜日の配信を予定しています。前週の内外情勢のポイントとなる動向を分析、解説するコーナーです。

 416日から22日を振り返ります。

 この間、安倍・トランプ両氏による6回目の日米首脳会談(1819日)、福田淳一財務次官が「セクハラ問題」で辞任(18日)、朝鮮労働党中央委員会総会で金正恩委員長がICBM・中長距離ミサイル発射中止と核実験場(豊渓里)廃棄を報告、などがありました。

 世界的影響を考慮すれば、やはり金正恩氏による総会報告を取り上げざるを得ません。トランプ大統領は「北朝鮮と世界にとって非常に良い知らせだ。大きな前進だ」と歓迎。安倍晋三首相は「前向きな動きと歓迎する」としながらも、「完全、検証可能で不可逆的な廃棄につながるか注視したい」と慎重な姿勢。文在寅大統領は「全世界が念願する朝鮮半島の非核化のために意味ある前進だと評価する」と歓迎しました。おおむね好意的に受け止めています。

 しかし、正恩氏の報告は「世界的な核軍縮に向けた重要な過程」において「核実験の全面中止の努力に合流する」と述べ、「わが国に対する核の脅威がない限り核兵器を絶対に使用しない」と述べています。これはどう見ても事実上の「核保有宣言」といえるものです。

 よって、もし報告のごとく実行されたとしても「100メートル走の2メートル進んだだけ」(南成旭・高麗大学教授)というところでしょう。

 今、米朝間交渉の中心は「開催地」といわれています。欧州(ジュネーブやストックホルム)、モンゴルのウランバートル、東南アジアの都市(ハノイ、シンガポール)が候補地として挙がっていますが、北朝鮮は国民への宣伝扇動のためには「何としても平壌で」と考えているのです。

 正恩氏は、昨年11月に「核戦力の完成」を宣言しました。(考えにくいのですが)たとえ今、「完全な非核化」を決断していたとしても、突然全ての「核」の廃棄というわけにはいきません。急激な政策転換は、党に対する深刻な疑念と不満が国民の中に生じるからです。 

 戦争か平和か、片時も目が離せない情勢になってきました。