世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

3回 米英仏、シリア攻撃の狙い

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 「世界はどこに向かうのか ~情報分析者の視点~ 」は、毎週火曜日の配信を予定しています。前週の内外情勢のポイントとなる動向を分析、解説するコーナーです。

 49日から15日を振り返ります。主な出来事を挙げてみましょう。

 ジョン・ボルトン氏が米国大統領安全保障担当補佐官に就任(9日)。中国の習近平主席が、国際会議「ボーアオ・アジアフォーラム」(海南省)の基調演説(10日)で4項目の市場開放策を公表し米国への配慮を示す。中国海軍が南シナ海でかつてない規模(1万人以上の動員)の軍事演習(11日~13日)を実施。米英仏がシリアを軍事攻撃(日本時間14日午前)などがありました。

 今回の情勢分析は、米英仏によるシリア攻撃を取り上げることにします。
 105発のミサイルが発射され、シリア国内の化学兵器に関係する施設3カ所が破壊されました。なぜ今なのか。今後、米英仏と露との本格的な軍事衝突に発展するのではないか、などについて説明します。

 攻撃の理由は、反体制派勢力が存在する地域(ダマスカス近郊の東ゴータ地区)で化学兵器(サリン、塩素ガスなど)が使用されたとみられたからです。化学兵器の使用は国際条約で禁じられている、決して容認できない行為です。特にシリアにおいては頻繁に使用されている事実(国連の調査で確認)があります。

 トランプ大統領が9日、「48時間以内に重要な決断を行う」と述べました。しかしマチス国防長官が慎重な対応を主張して決断は先延ばしとなり、国連安保理(12日)の結論を待つこととなりました。
 ところが、米国が作成した、化学兵器使用疑惑の真相解明と責任追及に取り組む調査団を送ろうとする決議案の採択で、ロシアは拒否権を行使。米国を、軍事力を行使せざるを得ない立場と追い込んだともいえるのです。

 しかし、米国はロシアに攻撃の事前通告し、シリアの露軍基地を標的としませんでしたし、ロシアは最新鋭の迎撃ミサイル「S400」を使用しませんでした。双方に配慮があったということです。米国はまた、米朝首脳会談を前に、シリアと親密な北朝鮮に対して断固たる姿勢を示したといえるでしょう。