世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

自衛隊輸送機アフガンに派遣、邦人1人輸送

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、8月23日から29日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 ハリス米副大統領、東南アジア歴訪(20日から24日)。日本政府、アフガンの邦人や現地スタッフと家族ら退避のため自衛隊機3機派遣(23、24日)。カブール空港周辺で自爆テロ、約200人が死傷(26日)。自民党と台湾の与党議員がオンライン会議を初開催(27日)、などです。

 アフガンに残る邦人らの退避支援のため、8月24日未明に鳥取県の美保基地を出発した航空自衛隊のC2輸送機は日本時間の同日夜、アフガン隣国パキスタンの首都イスラマバードの空港に到着しました。また自衛隊のC130輸送機2機も、埼玉県の入間基地から那覇基地経由で同日到着しました。

▲自衛隊のC130輸送機

 25日にはC2輸送機、26日にはC130輸送機が、それぞれアフガンのカブール空港に到着しましたが、退避を求める人たちが空港に着いておらず、希望者を輸送することができませんでした。その後、邦人1人(共同通信社通信員)が空港に到着し、イスラマバードに輸送することができました。

 避難の主な対象は、国際機関で働く数人の日本人などのほか、大使館と国際協力機構(JICA)の現地スタッフらで、その家族も含めると計数百人規模と報道されていました。「救出」計画は27日までで延長はないとのことであり、残念な結果となりました。

 直接的原因は26日にカブール空港の近隣で発生した自爆テロでした。
 「イスラム国(IS)」の一派が犯行声明を出しており、死傷者は米兵13人を含むおよそ200人となりました。空港周辺は大混乱となり、退避希望者を乗せた車が立ち往生してしまったのです。
 極めて残念なことです。今後、全員の退避が実現することを祈るばかりです。

 日本政府、外務省の対応について批判が出始めました。
 真っ先に現地の大使館員を外国軍(英国)輸送機で17日に退去させたのです。他方、ロシア大使館は退避希望者全員をロシア大使館に受け入れ、出国手続きさせて空港まで大使館員がタリバンに護衛までさせて誘導したといいます。また、英国大使はカブールにとどまり、アフガン人協力者のビザを出し続けていたとの報道もあります。

 ところが日本の大使館は、首都陥落直後、現地職員(アフガン人)を置き去りにして先に退避し、結果として自衛隊機による救出作戦にも失敗したのです。
 「韓国紙に“カブールの恥辱”とばかにされても仕方ない大失態」(「産経」8月30日付産経抄)と言わざるを得ません。

 今後、在外邦人保護や輸送に関する自衛隊法の不備、CIA(中央情報局/米国の対外情報機関)のような諜報機関が存在しないことなどを含め建設的な議論が必要でしょう。