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映画で学ぶ統一原理 22

(この記事は、『世界家庭』2020年8月号に掲載されたものです)

ナビゲーター:渡邊一喜

『デッドマン・ウォーキング』
1995年。122分。

殺人および強姦の罪で死刑を待つマシューが死刑廃止論者の修道女ヘレンに心を開き始める

前編 第1章 創造原理 / 良心作用

 時に、ある事件についての意見を述べ合う場で、主にウェブニュースのコメント欄やSNSで、人間の本性が善なのか悪なのか、の論争に出くわす。人間は生まれついての善を獲得しているのか、それとも自分本位の悪から逃れることはできないのか。いわゆる、性善説・性悪説の論議は尽きない。

 今回は、そんな人間の本性の善悪に迫る作品を紹介しよう。1995年の映画『デッドマン・ウォーキング』。監督・脚本は俳優のティム・ロビンス。そして、主演はスーザン・サランドン、ショーン・ペンである。サランドンはこの作品でアカデミー主演女優賞に輝いている。

 修道女であるヘレン(スーザン・サランドン)のもとに、一人の死刑囚から手紙が届いた。送り主のマシュー(ショーン・ペン)は、未成年カップルの二人に対する殺人および強姦の罪で死刑判決を受けていた。控訴する金銭的余裕のない彼は、黒人のスラムで人権活動をしている死刑廃止論者のヘレンに助けを求めたのだった。

 殺したのは自分ではない、一緒にいた友人が殺した。
 これが彼の主張であった。しかし、会いに来たヘレンに、貧しく育った生い立ちや、自身を受け入れてくれない社会に対する不満をまき散らし、悪態をつくマシュー。その態度にあきれるヘレンであったが、何かを感じ、彼の死刑回避に向けて取り組むことを決意する。

 しかし、死刑判決は覆らず、数日後の死刑執行が決定されてしまう。
 マシューは自暴自棄に陥るが、最後まで寄り添う覚悟を見せるヘレンに少しずつ心を開き始め、今まで語らなかった真実を語りだす。

 創造原理に、「いくら悪い人間であっても、正しいことのために生きようとするその良心の力だけは、はっきりとその内部で作用している」とある。さらに、「堕落人間にこのような良心の作用がないとすれば、神の復帰摂理は不可能である」と続く。

 インターネットの普及により犯罪が多様化した社会では、目立つ者は、これまでの歴史になかったほど誹謗中傷にさらされてしまう。そうなると、人を信じるよりも信じないほうが、性善説よりも性悪説をとるほうがリスクを回避できる。これが私たちの生きる現代社会の姿である。

 「人間は良心的存在である」。誰よりもまず、私たちがこの事実を強く信じなければならない。この映画はそのことを強く思い出させてくれる。

(『世界家庭』2020年8月号より)

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