シリーズ・「宗教」を読み解く 170
キリスト教の人生観②
霊性~神の子として完成に向かって歩む人生

ナビゲーター:石丸 志信

 キリスト教の伝統は、聖霊降臨の一日に始まるといわれる。
 それは、初めて人類の代表がイエスを、待ち望んできたメシヤ、人類の救い主として受け入れ、聖霊によって新たな生命に生まれ変わったからだ。
 それは、アブラハム以来2000年のユダヤ教の伝統においていまだ経験したことのない出来事だった。

 弟子たちはこの経験によって、イエス・キリストのみ言に従って生きるようになり、創造主を「天の父」と呼んで祈ることができるようになった。
 彼らは、互いに兄弟姉妹として友愛の情を結び、新しい共同体を形成するようになる。

 キリスト教の人生観を一言でまとめると、イエス・キリストと聖霊によって新しい命に生かされた人が、イエスの生涯と使徒たちの生き方に倣い、神の子として完成に向かって歩む人生である、と表現できる。
 伝統的にはこれを「霊性(スピリチュアリティ)」と言った。

 神の霊によって生きるということであり、聖霊によって生かされ成長していく生涯を歩むことだと言える。
 それはまた、イエスの生涯に倣って神と人に仕える生き方を追求することである。

 もっとも、全てのキリスト者が同様の熱心さでこの道を歩んだとは言えないが、時代時代に、国や地域を超えて全生涯をこの道にささげる者たちが登場して2000年の伝統は培われてきたのである。