愛の知恵袋 148
一日の計は朝にあり

(APTF『真の家庭』269号[2021年3月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

遅刻を繰り返す子供

 年長の幼稚園児の子を持つお母さんたちと懇談した時のことです。次々とあふれるようにたくさんの悩みが出てきました。

 「食べ物の好き嫌いが多くて困っています」「お片付けが全くできません」「アニメのDVDを見たらご飯も食べません」「わがままで、全然いうことを聞きません」「いまだに、箸もスプーンもきちんと使えません」「朝、寝起きが悪く、いつも遅刻をしています」「来年から小学校なので塾に行かせたいのですが、遊んでばかりです」等々です。

 その中で、私が一番気になったのは、遅刻を繰り返しているお子さんのことでした。

 年長の幼稚園児といえば、まもなく小学校に上がる年頃です。小学校からは本格的な集団生活と知識教育が始まります。

 幼稚園には、入学後にきちんと定刻に登校できて、みんなと一緒に楽しくやっていくことができるようにするための予備訓練という側面があり、大切な期間です。

約束ごとを守れる人に育てよう

 幼稚園のうちに遅刻する癖を直しておかないと、小学校でも遅刻をするようになる恐れがあります。そうして遅刻を繰り返していると、やがて欠席をするようになり、不登校になってしまうこともあります。

 これは中学も高校も同じですが、遅刻→欠席→不登校というパターンは多いのです。

 さらに、この習癖は社会人になっても問題を引き起こします。時間を守れない人はミスも犯しやすく仕事に支障をきたします。上司や同僚から叱責され、結局、居づらくなって会社を辞め、職場を転々とする人がいます。

 実社会では、約束事を守れない人は信頼されません。信頼を得られないということは、何をやってもうまくいかないということになります。

 約束事の最も基本が「時間を守る」ということです。そういう意味で、私は子供の時から「ルールを守る」「時間を守る」という基本的な教育が大切だと思います。

遅刻癖はこうして直そう

 「幼稚園なんだから遅刻くらい…」とお考えなら、あとで後悔なさるかもしれません。

 「子供が…」と言いたくなりますが、この時期は100パーセント親の責任です。特別な障がいを持つお子さんでない限り、親の意識転換と努力で改善することができます。

 「朝、起きられない」「目は覚めてもグズグズしている」というのは、前夜の就寝がきちんとできていないからです。親の事情や子供の気分次第に流されて、子供が遅くまで起きているということはないでしょうか?

 遅刻癖改善ポイントの第1は「夜」です。その子に必要な睡眠時間を考えて、「何時に寝る」ということを決めて、それを厳守することです。

 第2は「朝」です。起床・トイレ・洗面・着替え・朝食・通学にかかる時間を計算して、「何時に起きて、何時に家を出る」ということを明確に決め、それを守る訓練です。

 第3は「事前準備」です。前夜のうちに翌日の日課を確認し、服や持ち物などを決まった場所に揃えておき、親子共に、素早く支度ができるように準備しておきましょう。

 下に小さな弟や妹がいると、なお大変ですが、お母さんたち、頑張ってください!

始め良ければ終わり良し

 身に染み着いた習癖というものは、なかなか変わりません。思春期に入ってから直すのは容易ではありません。ありとあらゆる工夫と努力をして、少しでも早いうちに「遅刻する癖」を直してあげることが賢明です。

 もし、小学生の頃から「5分前集合」の習慣を身につけさせてあげることができれば最高です。その子には一生、幸運の女神が味方してくれるでしょう。

 「始め良ければ、終わり良し」という諺があります。

 英語では、「Well begun is half done 」という言葉があります。

 「始めがよければ、半分は終わったようなものだ」という意味です。

 物事はスタートが肝心です。入念な準備のもとに出発した場合と、準備もなくあたふたと出発した場合では、結果に天地の差が生じてきます。

 前夜に夜更かしして何の準備もなく、朝、慌てて出勤して遅刻したような日は、仕事も人間関係もうまくいかないものです。

 夜のうちに準備を終えて、ぐっすり休んで時間通りに起き、爽快な気分で一日を出発すれば、万事に余裕を持って対応でき、物事がうまくいきます。

 まさに、「一日の計は、朝にあり!」です。

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 次回の配信は4月2日です。