2026.08.04 17:00

世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
EUに衝撃、スペインへの移民流入
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、7月27日から8月2日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
朝鮮戦争休戦から73年(7月27日)。ポーツマスで英国とウクライナの首脳会談を開催(27日)。令和8年熊本地震発生(28日)。ペルー大統領にケイコ・フジモリ氏が就任(28日)。モロッコからスペインに大量の移民流入(31日)。日本政府のインテリジェンス政策の司令塔、国家情報会議発足(31日)。中国、人民解放軍創軍99年(8月1日)、などです。
ヨーロッパにおける移民問題は、それぞれの国の政権を揺るがす問題になっています。
この7月29日以降、スペインの「飛び地領」であるセウタ(人口約8万3000人)に、陸続きのモロッコ(人口3800万人)から国境を破って大量の移民が流入しました。

スペイン公共放送TVEによれば、移民の数は7月31日には6万人に達するほどになりました。セウタの人口の約7割に相当する数です。移民流入は31日までの3日間に集中しました。
モロッコ側から沿海を約5km泳いで接近し、防波堤などに設置されたフェンスをよじ登ってスペイン側に入るというものです。多くは若い男性で、未成年も多かったと報道されています。
警備に当たった軍部隊に移民の一部が投石で抵抗、上陸途中で溺死する者もあり、AFP通信は67人が死亡したと報じています。
スペインのサンチェス首相は31日に現地入りし、「国権への侵害」だと不法入国を強く批判。スペイン政府によれば、同日約4万8千人がモロッコ側に戻ったといいます。
このような事態が起こった背景には、7月初めにスペインの最高裁が、泳いでセウタ入りしようとする移民を即座に追い返すことは認めないとする判決を出したことにあるとされています。人道と治安の矛盾です。
衝撃はEU(欧州連合)内に広がっています。イタリアのメローニ首相はシェンゲン協定(EU加盟国を中心に入国審査撤廃などを定めた協定)を一時差し止め、スペインからの入国者について検問を復活させると発表しました。
そして自身のSNSで、セウタの状況について「不法移民が欧州国境に脅威をもたらしている」と強い警戒感を示したのです。
このことにより、スペインからイタリアへの入国に旅券の提示が必要になりました。
フランスもまた、スペイン国境の警備強化を発表し、フィンランドやデンマークからもシェンゲン協定からのスペインの除外を求める声が上がっています。
EUのフォンデアライエン欧州委員長は、移民送還でモロッコに協力を促しました。
トランプ大統領は31日の閣議で、「侵略のようだった。共和党が選挙で勝たなければ、米国でも同じことが起こる」と強調し、「ひどい。あの写真を覚えておけ。それが間違った側が勝てば、3年後にはわれわれのことになる」と警告しました。
ヨーロッパにおける移民政策は1999年、EU首脳会議で共通の難民・移民政策を目指す方針が示されたことから始まります。
2000年から2010年代前半に、難民認定や受け入れ手続きに関する共通ルールが段階的に整備されました。
ところが2015年のシリア内戦などの影響から、多くの難民・移民がEUに到着する「難民危機」を受けて、政策の見直しが進んだのです。
そして2024年、新たな移民・難民制度改革を正式に採択し、加盟国の負担分担や国境での審査手続きなどを強化する新しい枠組みを導入することとなりました。
このたびの事態を受けて、今後さらなる制度改革が進むことになるでしょう。
EU諸国で保守政党が躍進する背景の一つが、移民対応の強化策を打ち出しているからです。
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