幸福学と宗教的な生き方 1
はじめに

魚谷 俊輔

 『原理講論』の総序が「人間は、何人といえども、不幸を退けて幸福を追い求め、それを得ようともがいている」という言葉をもって始まるように、幸福は人生の最重要テーマであり、多くの人が宗教の門をたたく理由もまた、幸福の追求にある。

 そこで今回から始まるこのシリーズでは、「人が幸福になるにはどうすればよいのか?」という問いを学問的に掘り下げ、それが宗教的な生き方とどのように関わっているのかを探求してみたい。

 「幸福学」という学問がある。
 それは、人や社会の幸せについて、心理学や経済学、教育学などさまざまな角度から考える学問であり、日本における幸福学の第一人者として、前野隆司(まえの・たかし)氏が挙げられる。

 前野氏は慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンターでセンター長を務め、現在は武蔵野大学ウェルビーイング学部長・教授を務めている。
 彼は20年以上にわたって幸福学を研究しており、著書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書、2013年)は、最新の幸福学の成果に関する解説書で、幸福と相関関係にあるさまざまな要素を分析している。

 前野氏によれば、人が幸福になるには大きく分けて四つの因子があるという。
 そこでこのシリーズでは、彼の著作で紹介されている「幸せの因子」に基づき、宗教的な生き方や、家庭連合の信仰の在り方が幸福感のアップにどのように関係しているのかを分析する。

 前野氏の著作と併せて、このシリーズで取り上げたいもう一つの著作が、カーネギーの『道は開ける』(1948年、原題: How to Stop Worrying and Start Living)である。
 デール・カーネギー(18881955)は、アメリカの作家・講師で、自己啓発の先駆者である。人間関係や成功哲学を教えることで知られ、1936年に出版した彼の著作『人を動かす』が世界的ベストセラーとなり、一躍有名になった。

 『道は開ける』は、心配・不安を克服し、充実した人生を送る方法を説いた実践的な自己啓発書だ。
 邦訳は300万部を超えるロングセラーで、「悩みを減らし前向きになれる」「心が軽くなる」と高く評価されている。
 カーネギーは実践的であると同時に信仰の力や祈りの価値を重要視する人物で、それは『道は開ける』の19章で紹介されているように、彼の両親の影響が大きいようだ。

 シリーズ後半では、前野隆司・菅原育子共著の『「老年幸福学」研究が教える 60歳から幸せが続く人の共通点』(青春出版社、2023)を扱う。
 この本は「幸福学」と「老年学」のさまざまなデータから見えてきた、「年をとるほど幸せな人」の共通点を解説している。

 私自身を含め、み旨の道を歩んできた信仰の第一世代は高齢化しつつある。
 人生の最後の年月を幸福に暮らせるよう、老年の幸福についても深掘りしたい。

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