2025.04.30 17:00
共産主義の新しいカタチ 61
現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)
唯物弁証法で説明できない《クラ》の環
続・ブロニスワフ・マリノフスキー➁
経済勘定に収まらぬ人間精神の営為
いみじくもマリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』に序文を寄せた師であり、『金枝篇』の著者ジェームズ・フレーザーも次のように指摘しています。
「マリノフスキー博士は、トロブリアンド島人の注目すべき交換の仕組みを特に選んで研究の対象とし、原始経済の大きな意味を見事に力説されている。…トロブリアンド諸島と他の島々との間に行われる特異な貴重品の流通は…効用・利益・損失などの単純な計算に基づいているのではなく、単なる動物的な欲求より高い次元の情緒的、美的欲求を満足させるものであることを示している。
このことからマリノフスキー博士は、いまだに経済学の教科書に終始頭をのぞかせ、ある人類学者たちの考え方を枯らせるような影響を与えているように思われるあの『未開社会の経済人』という概念が、一種の幽霊に過ぎないとし、それに厳しい非難を浴びせておられる。…ひたすらあさましい利得の動機によって突き動かされ、最も抵抗の少ない場面場面を選んで、スペンサー流の原理に基づき、利得を仮借なく追求するものらしい。もしそのようなおぞましい架空の存在が、決して単なる便利な抽象概念としてばかりでなく、実際に未開人の社会にそっくりそのままの形で生きていると考える学者がまだいるとしたら、…博士の〈クラ〉についての記述は、そのような化け物を徹底的にぶちのめす一助となるだろう。つまり博士は、クラ組織の一部をなす実用品の交易が、実は原住民たちの考え方によると、全く何の実用にもならない他の品々の交易に比べれば、さして重要ではない…。
マリノフスキー博士…によれば、クラの制度においては、呪術が極めて重要な役割を演ずると判断される。これは、非常に興味深く示唆的な特徴である。博士の説明によれば、どうやら原住民の心の中では、呪術の儀礼を執り行い、呪術的な文句を唱えることが、この仕事全体の成功のために、必要欠くべからざるもののようである」
こうした記述が何を意味しているかと言えば、実は宗教的・呪術的・儀礼的なものの重視にほかなりません。多くの人類学者は社会進化論的な考え方で、呪術→宗教・哲学→科学と時代で移り変わると見ます。
ところが、どんなに文明が進展し科学技術が進歩しても、宗教的呪術的なものは、社会的影響力が小さくなったとはいえ文明社会から消滅しません。日本や欧米社会においても加持祈祷やエクソシズム(悪魔払い)など、呪術的な側面を残しています。
マリノフスキーの《クラ》探究は、文化や精神的な営みが、「支配者による教化」という唯物進化論的な観念で説明できません。
マリノフスキーのこうした姿勢は、彼の師の一人、エドワード・ウェスターマークの「近親婚の禁忌」研究と共に、「伝統文化の守護」という観点で見れば、唯物弁証法的なイデオロギーでは括(くく)れない人間精神の奥深さを示唆しているとも言えるのです。
★「思想新聞」2024年4月1日号より★
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