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氏族伝道の心理学 30
「ありがとう」と「ごめんなさい」

 光言社書籍シリーズで好評だった『氏族伝道の心理学』をお届けします。
 臨床心理士の大知勇治氏が、心理学の観点から氏族伝道を解き明かします。

大知 勇治・著

(光言社・刊『成約時代の牧会カウンセリング 氏族伝道の心理学』より)

第3章 氏族的メシヤ勝利と心の問題解決

「ありがとう」と「ごめんなさい」
 では、敬拝の次に何をしていけばよいのでしょうか。私は、両親や兄弟、親戚の方々に「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝えたらいいと考えています。

 最近、魔法の言葉として、「ありがとう」や「ごめんなさい」などを唱えることを勧める本が評判になっています。『豊かに成功するホ・オポノポノ』(イハレアカラ・ヒューレン著、ソフトバンククリエイティブ)や『鏡の法則』(野口嘉則著、総合法令出版)などがその代表でしょう。これらの本は、科学的な根拠はともかく、経験則として、こうした言葉を唱えること、あるいは相手に伝えることが、様々な良い影響をもたらすことを伝えています。私も、こうした言葉を親・兄弟・親族に対して直接伝えることをお勧めします。

 ここで大切なことは、「直接伝えること」です。写真や寝顔に言うのも悪くはありませんし、心の中で感謝することも大切ですが、直接伝えることがより重要です。では、なぜ、「ありがとう」や「ごめんなさい」を直接伝えることが重要なのでしょうか。

 私は、氏族的メシヤとは、氏族の中の堕落性(不安と怒りなど)の授受作用をなくし、創造本然(愛)の授受作用のみの関係をつくることだと述べました。「ありがとう」や「ごめんなさい」という言葉を伝えることは、そうした創造本然の関係をつくっていく第一歩になるからです。

 私たちは言葉を無意識的に発してしまうことがよくあります。そうした言葉の中に、不安や怒りなどの堕落性の思いが含まれている言葉が少なからずあり、その言葉が相手に伝わる時に、相手の不安、イライラを刺激してしまい、怒りや不安の授受作用が始まります。それに対して、「ありがとう」や「ごめんなさい」は、相手の創造本性に届く言葉なのだと思われます。もちろん、皮肉や嫌味で「ありがとう」や「ごめんなさい」を言うことはあります。ですから、正確に言えば、これらの言葉は、創造本性の強い言葉、と言えばいいのでしょうか。実際に、怒っている相手に対して、「ありがとう」とか、ましてや「ごめんなさい」を伝えることは、本当に難しいことです。よほど自分の気持ちを整理しないと、自分が悪いとわかっていても、相手に対する怒りがあるときには、こうした言葉を伝えることはできません。ですから、「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝えることは、自分の堕落性を整理して、創造本性の情を刺激するようになりますし、相手の創造本性が刺激されて、創造本然の授受作用が始まるきっかけになります。

 この「ありがとう」と「ごめんなさい」をご両親や兄弟、親族に対して伝えてください。そこから、新しい関係が始まるきっかけが見つかるはずです。

 ただし、ここで注意していただきたいことがあります。それは、親兄弟に対して伝わりやすい「ありがとう」「ごめんなさい」と、あまり伝わらない「ありがとう」「ごめんなさい」があるということです。伝わりやすいというのは、言い換えれば、本然の関係に変化しやすいという意味であり、伝わりにくいというのは、本然の関係に変化しにくい、という意味です。

 では、どのような「ありがとう」「ごめんなさい」が伝わりやすく、どのような「ありがとう」「ごめんなさい」が伝わり難いのでしょうか。

 以前、私がある教会員に対して、親に「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝えることを勧め、次回の面接までに何を言うか考えてくるように伝えたことがあります。次回の来談時に、その姉妹が、親に対して考えてきたことは、「このあいだ帰省した時に洋服を買ってくれてありがとう」と「家の車に乗っていて、ぶつけてしまいました。ごめんなさい」と、いう言葉でした。こうした言葉は、なかなか伝わらないように感じます。

 洋服を買ってくれたら、隣のおばさんにでも、同じ教会の教会員に対してでも、「ありがとう」と言うでしょう。車をぶつけた時には、レンタカー屋さんにも「ごめんなさい」と言います。つまり、こうした「ありがとう」「ごめんなさい」は、親子の「ありがとう」「ごめんなさい」ではないのです。もちろん、こうしたことでも、ありがとうやごめんなさいを伝えないよりは伝えたほうがよいことは間違いありませんが……。

 では、親子の「ありがとう」「ごめんなさい」は、どのようなものなのでしょうか。

 それは、親子関係だからこその「ありがとう」「ごめんなさい」です。「貧しい中、大学まで行かせてくれてありがとう」「小さい頃、身体が弱かった私をいつも看病してくれてありがとう」「中学校の頃、反抗して『大嫌い』って言ってごめんなさい」などは、親子ならではの「ありがとう」と「ごめんなさい」でしょう。

 そして、親に対する一番の「ありがとう」「ごめんなさい」は、「生んでくれてありがとう」「お父さんの娘でありがとう」でしょうし、「親孝行ができていなくて、申し訳ありません」ということでしょう。これらは子供にしか言えませんし、生まれてすぐに離れ離れになってしまっていたとしても言える、いえ、もしそうだとしたら、なおさら言わなくてはならない、親に対する究極の「ありがとう」「ごめんなさい」です。

 次に、「ありがとう」「ごめんなさい」の伝え方です。気持ちを伝えるためには、手紙、メール、電話、直接向かい合って言うなどいろいろな方法があります。その中で、どれを選ぶのがよいのでしょうか。

 一番お勧めするのは、電話です。なぜ電話かというと、手紙やメールに比べると、やはり息遣いが伝わるというか、気持ちの伝わり方が違うようです。直接会って伝えたいと言う方もいます。直接会って話すのはエネルギーの要ることですし、その意気込みは素晴らしいものです。ただ、私が出会った方の中には、直接伝えてうまくいかなかったという例が少なからずあります。

 それはなぜでしょうか。電話であれば、必要な要件だけを伝えて切ることができます。もし、会って伝える場合はどうなるでしょうか。具体的にイメージしてみてください。近くに住んでいればいいですが、遠くにいると泊まりがけで行くようになるかもしれません。そうすると、「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝えただけではなく、いろいろな話をすることになるでしょう。そうすると、こちらがよほど気持ちをコントロールしていないと、つい親に要求したり、親を責めたり、逆に自分の行いを言い訳してしまう、そうした言葉が出てきます。これまで何人かの方は、直接伝えようと考えて、親のところに行き、「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝えたのですが、それだけでなく、「ごめんなさい」と言ったあとに言い訳をしてしまったり、親に対して嫌だったことやつらかったことも伝えて、いつもと同じような会話になってしまった、と言っていました。

 電話であれば、こうしたことはなく、感謝とお詫びの言葉だけを伝えて、一旦切ることができ、直接話をするときのようなリスクが少なくなるのです。こうしたことから、私は、まずは電話で伝えて、関係が深まったところで、より侍るために実家に行くことをお勧めしています。

 電話ではなく、手紙で伝えたいという方もいます。どこか気持ちの中で逃げているところがあるのかもしれませんが、面と向かって話をすると緊張してうまく話せないという方もいるので、そうした場合には、手紙から始めても悪くはないかもしれません。メールというのは、直筆の手紙に比べると、やはり気持ちの伝わり方は落ちるようです。なので、電話が難しい場合は、せめて直筆の手紙で気持ちを伝えてください。

 ただ、同居している場合には、時間をつくって直接話をして伝えられたらいいと思います。その際に、長々と話をせずに、「一度お話をしたいことがあります」と言って、きちんと面と向かう場面をつくって「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝えられたらいいと思います。

 親に、「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝えることができたら、次には夫や妻の両親に伝えてあげてください。特に女性にとっては、舅(しゅうと)と姑(しゅうとめ)に伝えることは重要です。もしかしたら、自分の親に伝えることよりも重要かもしれません。血統は男性で連なっていきます。その男性の血統をつないでいくのが女性の役割です。ですから、妻には、夫の血統的問題を整理していく使命があります。男性の血統を神様につなげていくのが女性の役割なのです。ぜひ、舅と姑に対して「ありがとう」「ごめんなさい」を伝えてください。

 伝える内容は、自分の親のときと同じです。「愛する夫を生んでくれてありがとう」と「嫁として親孝行ができていなくてごめんなさい」が、嫁としての究極の「ありがとう」「ごめんなさい」です。

 夫にとっては妻が自分の血統のメシヤですし、妻にとっては夫が自分の血統のメシヤです。夫婦がそれぞれ互いの家庭の両親に「ありがとう」「ごめんなさい」をすることが、それを出発として血統に侍り、氏族的メシヤをしていくことが、夫婦や子供などの家庭内の問題を解決していくポイントになります。ぜひ、互いの血統に侍るということを実践していってください。

 また、縦的なものは横的に展開します。親子関係は、兄弟関係に反映されます。親子関係に問題がある場合には、兄弟仲にも問題が出てくるケースが少なくありません。特に、親の怒りは家庭内に蔓延し、兄弟げんかとして現れることも多いものです。ですから、親が霊界に行って地上にいない場合には、兄弟姉妹に対して「ありがとう」「ごめんなさい」をして、創造本然の兄弟関係をつくっていってみてください。同様に、縦の関係は横の関係として親族にも広がっていくので、氏族的メシヤとして、氏族圏全体に、「ありがとう」「ごめんなさい」を行っていくことが重要になります。

 人間はいつ霊界に行くかわかりません。特に親は、自分よりもずっと霊界が近いでしょう。親孝行はできるだけ早いに越したことはありませんし、「ありがとう」「ごめんなさい」も親に直接伝えられれば、そのほうがずっと良いことは間違いありません。そのためにも、できるだけ早く、ご両親に「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝え、それをきっかけに侍る生活を始めてください。

 親に「ありがとう」「ごめんなさい」を伝えることは、確かに勇気が必要です。特に親子関係に問題を抱えている場合には、そうしたことを伝える気持ちになれないでしょう。あるいは、「ごめんなさい」を伝えたときに、「やっと今頃わかったか」などと馬鹿にされそうで言いたくないという方もいます。私が知っている限りでは、「ありがとう」と「ごめんなさい」を伝えて、親からさらに傷つけられるようなことを言われたという例はありません。どの親も、黙って聞いてくれて、温かい言葉を返してくれています。その場では何も言わなくても、あとで必ずポジティブなメッセージが返ってきています。授受作用なので、こちらが創造本性の情で投げ掛ければ、創造本性の情で応えざるを得ないのです。それが原理です。

 そして、この「ありがとう」「ごめんなさい」をきっかけに、親に侍り、兄弟に侍り、親族に侍り、氏族的メシヤを完成させてください。それこそが、私たちに与えられた、他の人が代わることのできないみ旨なのです。

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 次回は、「あとがき」をお届けします。


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