世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

重要会議に見る中国の苦悩と習氏独裁強化

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は10月26日から11月1日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 中国重要会議、「5中総会」始まる(26日)。米、最高裁判事にバレット氏承認(26日)。韓国・李明博元大統領、懲役17年が確定(29日)。仏、新型コロナ感染拡大、全土で2度目のロックダウン(30日)。大阪都構想、住民投票で否決される(11月1日)、などです。

 中国共産党の重要会議、「5中総会」(第19期中央委員会第5回総会)が10月26日から29日まで開催されました。
 中国の「これから」を知る重要な内容が含まれています。

 主な内容は、2021年からの5カ年計画と2035年までの長期目標について。さらに高官人事案件です。習政権の長期化を占う重要な要素なのです。

 まず5カ年計画についてです。
 ポイントは、国内消費の拡大に重点を置く「循環」と貿易を軸とした「循環」、これらを合わせた「二つの循環」の推進を掲げたことです。
 しかし今後の成長維持のためには「内の循環」、すなわち国内消費の拡大に頼らざるを得ないのが実情なのです。
 原因はコロナ禍で海外からの注文が激減したことと米中対立です。

 今後の課題として、技術革新を国の現代化の中核に置き、科学技術の自立を国家発展戦略の支えとすること、製造強国、品質強国、インターネット強国、デジタル強国の建設に注力することなど、「自立」がキーワードとなっているのです。

 外需激減により、内需拡大を核にする生産、流通、分配、消費のサイクルを回す「国内大循環」という考え方が重視されるようになったのです。しかしこのサイクルの中で最も重要な「生産」がつまずいているのです。

 そもそも中国では、スマートフォンなどに使う高性能半導体の多くを輸入に頼ってきました。しかし米国が、中国向け半導体部品や製造装置に輸出規制(米国企業のみならず、他国の企業に対しても)をかけたため、国内生産はますます厳しくなりました。米国に技術を頼ってきたことが、生産の足かせになっているのです。

 さらに内需拡大に欠かせない「消費」の底上げも、新型コロナウイルスの影響で先が見通せない状況が広がっています。特に厳しいのは農民工(出稼ぎ労働者)です。

 新型コロナで海外からの発注ものは激減し、農民工の多くは仕事を失い、食費も切り詰めているといいます。
 中国政府によれば、農民工は約2億9000万人。故郷への仕送りが支出の多くを占めているとはいえ、出稼ぎ先での消費が減れば、経済全体への影響も無視できないのです。

 高官人事案件について述べてみます。
 習氏や胡錦涛前国家主席は総書記に就く前に最高指導部メンバーの党政治局常務委員として5~10年間の経験を積み、代替わりとなる党大会の2~3年前に軍のポストを兼務しているのです。

 よって今回、そのような人事がなされれば、その人が習氏の後継者となると見られたのです。しかし次世代指導者の常務委員昇格や、現在の常務委員を党中央軍事委員会副主席に任命するなどの人事は発表されませんでした。
 習氏による「事実上の続投宣言」と受け止めることができるのです。

 中国の苦悩を見て取れる「5中総会」でした。