愛の知恵袋 130
家族会議は、いいもんだ

(APTF『真の家庭』251号[2019年9月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

もっと心の通じ合う家族になりたい…

 40代の婦人から相談がありました。彼女は会社員の夫と、高1・中1の息子と小4の娘がいて、本人もパートの仕事をしています。家族の誰かに問題があるわけではないが、「何か、うまく通じ合えない…」というもどかしさを感じ、時々、寂しさや苛立ちを感じるというのです。

 夫は仕事に追われているのか、家ではあまり口を開かず、何を考えているのかよくわからない。先日も突然、「明日から3日間、東京に出張する」というので、「わかっていたのなら、どうしてもっと早く言ってくれないの!」と口論になってしまったそうです。

 また、思春期に入った子供たちは〝自分〟の世界に入り込むようになって、一人一人が勝手に行動するので兄弟でも衝突が起きたりして、子供同士の関係も、最近は不安を感じることがあるというのです。

 一通りお話を聞いた後、私は解決策として、「〝家族ミーティング〟をしてみませんか?」と提案しました。

 〝家族会議〟というと、なにか堅苦しいので、私は〝家族ミーティング〟と呼んでいますが、実は今、これがデリケートな家族間トラブルの解消や、家族同士の絆を深めるうえで大きな効果があることが知られるようになり、すでに多くの人々が実践し始めています。

 家族会議を始めたきっかけや、その方法・内容などは各家庭で様々ですが、実行しているほとんどの家庭が、大きな変化と手ごたえを感じ、「やって良かった!」と言っています。

 特に、子供達が小さい頃から始めた家庭では、彼らが大きくなってもその習慣は継続され、助け合い慕い合う良い心情関係が築かれています。

〝家族ミーティング〟のやり方

 まず、夫婦でよく話し合って、子供達に家族ミーティングをすることを提案します。

 最初は、できるだけ自然な形で始めるといいでしょう。

 例えば、「うちの車は古くなったから、今度買おうと思うんだけど、みんなの意見も聞きたいと思うんだよね。夕ご飯のあと、居間で家族ミーティングをするからね!」と言って集めます。

 お父さんか、お母さんが議長役になって、話したい議題をいくつか準備しておきます。

 例えば、①いつまでに買うか。②予算はいくらくらいか。③どんな車を買いたいか。④色はどんな色がいいか…などです。

 できれば、居間には小型のメモ張りボードか、ホワイトボードがあるといいですね。出てきた意見を紙に書いてボードに張ったり、ホワイトボードに書いたりして、話を進めていきます。

 やってみるとわかりますが、親が驚くような、意見や提案がどんどん出てきます。そして、父親が一人で決めて買った車には関心も薄く不満を言う子もいますが、みんなで話し合って決めた場合は、全く反応が違います。「自分たちの車だ」という気持ちがあるからです。

 候補の車を見に行く時もみんな行きたがり、買ってからも進んで洗車を手伝ったり、愛着をもって大切にするようになります。

 こうして、最初に、何かのことをみんなで話し合って決めると、その楽しさ、感覚が分かります。それを何度かやって、あとは、「毎月、第1日曜日にやろう!」と提案して、定期的に家族会議をするようにすればよいのです。

ミーティングで深まる家族の絆

 家族会議の進行と内容は、例えば、こんな風にします。

1.「私の近況報告」(家族全員が順番に話す)

2.「今回の特別テーマ」

3.「先月の結果」(各自が先月立てた目標の結果。評価・反省)

4.「今月の予定と目標」(今月の主な予定。今月は何を目標にして頑張るか)

5.「今回の特別テーマ」は、どんなことでもよいのです。

 例えば、「家事(お手伝い)の役割分担」「お小遣いをいくらにするか」「テレビを見る時間」「ゲームをする時間」「宿題をする時間」「次の連休をどうするか」「じいちゃんとばあちゃんへのお土産は何がいいか」「〇〇ちゃんが欲しがっているペットを飼っても良いのか」「世話は誰がするか」……等々です。

 家族会議は続ければ続けるほど、夫と妻、親と子、兄弟と姉妹が、お互いの事情を知ることによって悩みも理解できるようになり、慰めたり、励ましたりすることができます。

 また、一人一人が胸に秘めている将来の夢や計画も知ることができ、みんなで応援し合うことができます。

 そして、何よりも、「自分は家族に必要とされ、尊重されている」という喜びを感じます。

 こうして、お互いの間に、尊敬や愛おしいという情が生まれ、家族の一体感が強くなり、心の通じ合う理想的な家族になっていくことができます。

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