『平和の母』から学ぶ13の人生の道しるべ 8

温かい心の持ち主になる

浅川 勇男

 「平和の母」シリーズ第2弾。自叙伝書写の第一人者、浅川勇男氏による「『平和の母』から学ぶ13の人生の道しるべ」をお届けします。

 幸せになるために、何を持ったらいいのでしょうか。
 ある人は「それは、健康な体でしょう」と答えました。
 では、健康でなければ、幸福は、夢のまた夢、なのでしょうか。

 群馬県に、名誉県民として尊敬されている、星野富弘さんというかたがいらっしゃいます。群馬県勢多郡東村に誕生し、健康でスポーツマンで、中学校の体育教師をしていました。

 放課後、前方宙返りの指導をしている時に、星野さんは頭から床に転落して首の骨を折ってしまいました。そのため、足が動かず、天井を見るだけの人生になってしまったのです。

 もし「健康な体を持たなければ、幸福になれない」というなら、彼の人生は絶望です。しかし彼は、絶望ともいうべき状況の中で、三つの光を見いだしたのです。

 第一の光は、母の愛でした。
 彼は若い頃、毎日愚痴ばかり言っていた母を軽蔑していました。しかし、動けなくなった彼の世話をしたのは、その母だったのです。母の献身的な愛に目覚めて詩を作りました。

神様が
たった一度だけ
この腕を動かして下さるとしたら
母の肩をたたかせてもらおう

 発見した第二の光は、咲く花たちの美しさでした。

私の首のように
茎が簡単に折れてしまった
しかし菜の花はそこから芽を出し
花を咲かせた
私もこの花と同じ水を飲んでいる
同じ光を受けている
強い茎になろう

 彼は花の美しさに感動し、筆を口にくわえて花たちの絵を描いたのです。

 そして、第三の光に出合いました。
 神の愛によって生涯の伴侶と出会ったのです。妻の愛の光を見いだしたのです。
 アジサイの絵と共に、妻の愛を詩に託して添えました。

結婚ゆび輪は
いらないと
いった
朝、顔を洗うとき
私の顔を
きずつけないように
体を持ち上げるとき
私が痛くないように
結婚ゆび輪はいらないといった

今、レースのカーテンをつきぬけてくる
朝陽の中で
私の許(もと)に来たあなたが洗面器から冷たい水をすくっている
その十本の指先から
金よりも
銀よりも
美しい雫(しずく)が
落ちている

 彼は結婚して、すでに40年がたちました。
 母がしていた絵作業を、今は妻がしています。彼の詩画には夫婦愛が溢れています。
 幸福になるために持つべきものは、愛に溢れた、温かい心、だったのです。

 「平和の母」、韓鶴子夫人は言われます。
 「幸福は、あらゆるものがそろっている状態で訪れるとは限りません。不足なものがある中でも感謝の思いを持てば、知らず知らずのうちに訪れてくるものなのです。…本物の人格を備えた、温かい心の持ち主となることが、最高の配偶者になる道なのです」(韓鶴子総裁自叙伝『人類の涙をぬぐう平和の母』280~281ページ)

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