今、改めて問う、トランプを選んだアメリカの本質
トランプ勝利の根因、「反知性主義」とは何か

(U-ONE TV『KMSビューポイント』第35回より)

トランプを選んだ米国の本質
(4)反知性主義の大統領たち

ナビゲーター:木下 義昭

 「反知性主義」と見られた二人のアメリカ大統領を紹介します。

 一人目は、アメリカで最初の反知性主義の大統領だと考えられているのは、1829年に第7代大統領に就任した民主党のアンドリュー・ジャクソンです。
 彼は「ロバ(まぬけ)」と徹底的にバカにされました。それが今の「民主党=ロバ」というキャラクターの由来です。しかし結果は知的エリートに反感を持つ大衆の圧倒的支持を受けたジャクソンの圧勝でした。

 ジャクソン大統領は、十分な教育が受けられませんでしたが、靴職人を勤めた後、軍人となり、米英戦争で活躍しました。ジャクソンは、「荒くれ男」と言われ、「決闘した大統領」としても有名でした。相手は早撃ち自慢のチャールズ・ディッキンソン。決闘の理由は、ディッキンソンがジャクソン氏の妻を侮辱したことでした。

▲アンドリュー・ジャクソン(Wikipediaより)

 ジャクソン大統領は、「東部の特権階級の声を代表した議会の横暴を制止した大統領こそが市民の声を代弁する国民の代表者である」と主張し、今日のアメリカの大統領のあるべき姿をつくり出しました。在任中に政策を実現するためにつくられた政党は、その後「ジャクソニアン・デモクラシー」という彼の民主的な政治思想を引き継ぎ、今日の「民主党」となっています。

 二人目は、アイゼンハワー第34代大統領です。
 アイゼンハワーは「偉大な凡人」といわれた人物です。彼は、第二次大戦中の連合軍最高司令官としてノルマンディー上陸作戦を指揮したことで有名です。政治には無関心でした。経済的に困難な庶民の子であり、大学進学のために学費を稼ごうとすぐ上の兄と地元の工場で働いていたこともあります。しかし友人の影響もあって、学費不要のウエストポイント陸軍士官学校に入学するようになります。

▲ドワイト・デビッド・アイゼンハワー(Wikipediaより)

 1952年の大統領選挙。共和党候補のアイゼンハワーの対立候補は、名門プリンストン大学を優秀な成績で卒業したアドレー・スティーブンソンでした。彼は、祖父が副大統領を務めたこともある家柄でした。しかし結果は予想に反してアイゼンハワーの圧勝。「知性に対する俗物根性の勝利」といわれ、反知性主義が大いなる高まりを見せたのです。(続く)

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