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映画で学ぶ統一原理 4

(この記事は『世界家庭』2018年3月号に掲載されたものです)

ナビゲーター:渡邊一喜

『ナルニア国物語 第1章 ライオンと魔女』
2005年公開のアメリカ映画。140分。
78回アカデミー賞でメイクアップ賞を受賞

ファンタジーの世界から、また違ったイエス像が見えてくる

【前編】第4章 メシヤの降臨とその再臨の目的/【後編】第2章 イエス路程

 ファンタジーは、西洋では文学においても古典的なジャンルとしてりっぱに確立されており、その世界観を通して、人間の幸福や罪、平和などを独特な方法で教えてくれる。『ハリー・ポッター』や『指輪物語』は優れたエンターテインメント性とともに、丁寧な心理描写と多元的なメッセージで世界をとりこにしたのだ。

 そんなファンタジー作品の中で忘れてはならないものが、C・S・ルイスの『ナルニア国物語』である。

 著者のCS・ルイスは幼少期にキリスト教信仰を失い、以降オカルトや神話に傾倒したが、第一次世界大戦をまたぎ回心した経歴を持つ。そんなルイスの信仰的摂理観、世界観がこの作品にはふんだんに盛り込まれているのだ。

 中でも、第1巻である『ライオンと魔女』が最もシンプルで優れた構成になっている。話の舞台は第一次世界大戦中のイギリス。戦火を逃れて田舎の屋敷に預けられたペベンシー四兄弟は、偶然にも洋服ダンスの奥に続く雪深い極寒の「ナルニア国」に入り込んでしまう。ひょんなことから予言の英雄に祭り上げられる四兄弟だが、白い魔女により本来の姿を失ってしまったナルニアの解放のため、不思議なライオンのアスランに導かれながら戦う物語である。この第1巻が2005年に映画化された。

 この映画は、イエスの生涯が下地になっている。「アスラン=イエス」の言動を中心として、「白い魔女=サタン」「四兄弟=使徒」が戦う。裏切り、敗北、復活、回心、最後の戦い。そして、ついには本来のナルニアを取り戻す。宗教的な下地のある作品でありながら説教くささはない。原作はどうしても児童文学の域を出ないが、映画版はCGで作り上げられた躍動するナルニアの世界が見事であり、人物の描写も細やかで秀逸である。

 『偉大な生涯の物語』や『奇跡の丘』、『パッション』に至るまで、映画によるイエス伝は少なくないが、ファンタジーの世界から読み込むことによって、また違ったイエス像が見えてくる。子供と一緒に楽しく学べる点も魅力である。アスランと四兄弟が戦う姿を通して、真の父母様と私たちについても考える場を与えてくれる。(『世界家庭』2018年3月号より)

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