世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

日韓の政策対話、3年半ぶり開催

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は12月16日から22日までを振り返ります。

 この間、次のような出来事がありました。
 習主席、林鄭月娥長官北京で会談。香港政府への支持強調(16日)。日韓貿易管理局会合を3年半ぶりに開催(16日)。米宇宙軍創設、国防権限法案可決。予算80兆円、近く成立へ(17日)。プーチン露大統領「中国と軍事同盟結ばず」(19日)、などです。

 今回は日韓の輸出管理に関する政策対話について説明します。
 日韓両政府は12月16日、都内で両国の輸出管理を巡る政策対話を3年半ぶりに開催しました。文在寅政権発足後、初めてです。
 背景となったのは、去る11月22日に韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効(11月23日午前0時より)を回避する決定をするにおいて、条件として提示したのが両国当局者による輸出管理を巡る政策対話だったのです。

 対話においては、韓国側は同国の輸出管理の改善策などを説明し、日本側が韓国側の対応状況を確認しました。そして両国ともに対話後、「相互理解が進んだ」と一定の進展を示唆する見解を明らかにしましたが、日本の「厳格化措置の見直し」に具体的な言及はありませんでした。しかし、今後、両国共に輸出管理で対話を継続することを確認したのです。

 今回の政策対話には、両国から局長級の事務方が参加しました。日本側は飯田陽一貿易管理部長、韓国側は李浩鉉(イ・ホヒョン)貿易政策官らが出席しました。

 両国は予定の終了時間を大幅に超過しての協議を行いましたが、それは、事後の発表内容の擦り合わせを行ったためです。
 これまで両国は、各種の協議後に公表される声明などでの食い違いが多く、「言った、言わない」の批判合戦になることがあり、協議や会談の成果が失われてしまうこともあったのです。

 韓国側は今回の政策対話の再開に先立って輸出管理体制の強化に努めました。来年1月には産業通商資源省傘下の専門機関「戦略物資管理院」の輸出管理本部の人員を5割増やして5人体制に強化します。日本側が要求してきた内容の一つです。

 しかしながら、韓国を輸出優遇措置の対象となる「Aグループ」に戻すための条件としては不十分、というのが日本側の見方です。

 経産省は11月の自民党の会議で、「Aグループ」に戻すための条件として①韓国側の法整備 ②輸出管理の人員増強 ③日韓の政策対話再開、の三つを挙げています。
 さらに、日本側が政令(8月7日に閣議決定された対韓輸出管理の厳格措置)の改正をする手続きも必要になります。

 これらの積み重ねが両国の信頼醸成につながります。