家族の絆づくり 91
「引きこもり」回復の五つのステップ

ナビゲーター:阿部 美樹

150万人の引きこもり

 日本は「引きこもり」状態にある人が、内閣府の調査によると約150万人(1539歳:54万人 平成27年調査、4064歳:61万人 平成30年調査)という驚くべき結果が出ています。しかもこれは少なく見積もった数で、実際はもっと多い可能性があります。

 引きこもりから社会復帰に導くために30年以上活動している臨床心理士は、「親の姿勢が大切である」と説き、引きこもりになった人を五つのプロセスで社会復帰に導いています。

肯定的なアイデンティティーに至るまで

 第1は、「希望」のステップです。
 まず親自身が「引きこもりになったのは自分たちに責任があるのかもしれない」という姿勢で子供を見て接することです。
 子供に責任を押し付けるのではなく、引きこもり状態でも、わが子を無条件に肯定して苦しみに寄り添うと、子供に「自分はこの世界で生きていいんだ」という希望が生まれます。

 第2は、「意志」のステップです。
 希望が生じると、子供は親に自分の心の内を話したりします。その話を否定せずに全部聞いてあげていくと、「こうしたい」「ああしたい」という「意志」が芽生えます。

 第3は、「目的」のステップです。
 意志が芽生え始めると、「大学に行きたい」「働きたい」という、生きる「目的」を持つようになります。

 第4は、「有用性」のステップです。
 実際に社会に出て就労・就学してみる段階です。
 ここで大事なのは、心が揺れ動いている段階なので、「やめてはいけない。3年は我慢しろ」など、親が正論を押し付けないことです。あくまでも、子供の判断を肯定してあげることが大切です。

 第5は、「アイデンティティー」のステップです。他者から認められる承認欲求や自己実現欲求が高まり、「自分は今のままでいい」「社会からもそう思われている」という肯定的な「アイデンティティー」の段階に至り、引きこもりから回復していきます。