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映画で学ぶ統一原理 1

(この記事は、『世界家庭』2018年1月号に掲載されたものです)

ナビゲーター:渡邊 一喜

「レインマン」
1988年公開のアメリカ映画。134分。アカデミー作品賞

かけがえのない兄弟としての関係を取り戻す2人

アダム家庭-実体献祭(カイン・アベル)
 

 

 真の父母様のみ言は私たちの道しるべであり、その 膨大なみ言を正しく解釈するための基準が『原理講論』と言えるであろう。しかし、実際に『原理講論』を手に取ってみると、その内容は歴史、政治、宗教、科学など、人間の活動全般に及ぶため、決して易しくはない。さらに基礎として聖書とキリスト教信仰の理解も必須である。「原理」を学ぶには、多くのハードルがあるのだ。

 私は、千葉中央修練所で原理講義を担当しているため、「原理」の周辺知識の学習に努めているが、その中で、時に映画などの文化的な媒体が新しい視点を与えてくれることがある。知的な作業によって微視的になりがちな感性を、自由にしてくれるのだ。常々、このような文化的コンテンツの重要性を強く感じている。

 そんな折、『世界家庭』誌上で原理学習の助けとなるような映画を紹介する機会を与えられた。『原理講論』の章構成順はこの際気にせず、扱いやすい題材から進めていこうと思う。この連載を通じて、少しでも統一原理に対する関心と理解を深めていただければ幸いである。

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 1980年代の映画を今見ると、すでにクラシックな趣がある。映画制作における技法やテクノロジーの進歩は目覚ましいので、現代の若者にとっては、“クラシックな時代”の映画は退屈に映るかもしれない。

 しかし、やはり名作は時代を超える。そこにはテクノロジーやファッションでは置き換えられないものがある。1988年の作品「レインマン」は、正にそのような作品である。主演はダスティン・ホフマンとトム・クルーズ。その年のアカデミー作品賞を受賞した。

 中古車販売会社を経営する若手社長チャーリー(トム・クルーズ)のもとに、長年関係を断っていた父の訃報が入った。しかし、遺言に記されていたのは、遺産の全額をチャーリーの兄に譲るというものだった。チャーリーは、存在すら知らされていなかった兄が遺産の相続人であることに全く納得できなかった。

 直談判しようと兄のもとを訪ねると、その兄・レイモンド(ダスティン・ホフマン)は脳に重度の障害を抱えていることが分かった。交渉を試みるも、後見人からも了承を得られず、業を煮やしたチャーリーは、遺産交渉のための人質さながらに、レイモンドを病院から連れ出してしまう。2人は1週間を共に過ごすことになった。初めはいらだちを隠せないチャーリーだったが、レイモンドと向き合うことで少しずつ心の変化が生まれ、2人はかけがえのない兄弟としての関係を取り戻していく。

 この作品の面白いところは、チャーリーとレイモンドそれぞれを、カインとしてもアベルとしても読み込める部分だ。父親の遺産を受け継ぐという恵みを受けた点では、レイモンドがアベルだろう。その内面の純粋さを見ても納得がいく。態度の悪いチャーリーはカインだ。しかし社会的な人格を考えると、レイモンドは自身のライフスタイルを中心にしか生きることができない。チャーリーの善意も善意として受け取ることができないのだ。こう見詰めるとカインとアベルが逆転する。

 カインとアベルを単純な善悪で分けることは簡単だが、現実は複雑である。より重要なことは、カインとアベルが一つになるところにある。「カイン・アベル」の一つのモデルとして、この映画から学べるものは大きいと思う。(『世界家庭』2018年1月号より)

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 『世界家庭』201910月号の感想はコチラ(締め切りは2019年11月10日)