シリーズ・「宗教」を読み解く 77
日本人は宗教的に寛容なのか?④

一神教の国と比較して不寛容度が高い日本

ナビゲーター:石丸 志信

 「一神教は不寛容だが、多神教の日本は寛容だ」という言葉を何度も聞いてきた。
 私自身は、その言葉を聞くたびに不快感を覚えてきた。

 「唯一の神を信じる」ということは、全ての存在の根源を指しているのであって、多くの神々というものの一つだけを選択し、他を排除するという論理とは全く違う。それにもかかわらず、その論理の中に閉じ込めて批判されているのだから快いわけがない。比較し得ない存在を比較可能な存在に引き下げ、その次元で並存させようとする。

 前掲書(※)の堀江宗正氏(日本の宗教心理学者、東京大学准教授)は、世界価値観調査のデータに基づき日本人の他宗教に対する不寛容さを指摘する。

 調査は、寛容度を示す質問に対する、アメリカ、ブラジル、インド、パキスタン、中国、日本の6カ国の比較。

 「他宗教の信者を信頼する」という質問に対し、日本は中国に次いで二番目に低い。「他宗教の信者も道徳的」は最低の割合。「他宗教の信者と隣人になりたくない」は多神教のインドと肩を並べて嫌悪度が高い。「一神教」の国と比較して不寛容度が高いことを示しているという。

 世界の宗教に対する理解を深め信頼度を高める一人一人の努力なくして、日本は宗教的寛容の国とはなり得ないことになる。

※参照:堀江宗正編『いま宗教に向き合う1 現代日本の宗教事情(国内編Ⅰ)』(岩波書店2019年9月)