夫婦愛を育む 73
愛が呪いに化ける?

ナビゲーター:橘 幸世

 先日生徒が、「先生、同じ“思う”でも、文章によって使われる単語(英語)が違う。これ全部暗記するしかないの?」と聞いてきました。

 私は、「英作文をするときは、単に日本語の単語を英単語に置き換えるんじゃなく、元の文章の内容を自分の中で映像化して(映像で理解して)、その映像を自分の英語力の範囲で表現するんだよ」と答えました。逆も然りで、そうしないと正しく訳せないのです。

 普通のコミュニケーションも同様で、言葉はあくまで媒介であり、伝えたいのは気持ちだったり事実だったり理論だったりします。

 顔は浮かぶけれど名前が思い出せないということはままありますが、「ほら、あの人のことよ」「ああ、あの人ね」といった会話も、お互いが同一人物を思い浮かべていれば、たとえ名前が分からないままでも、成立します。逆に「ほら、田中さんのことよ」と言っても、相手が「田中さん」を知らなければ会話はそこで止まってしまいます。

 メールでのやり取りが多くなって久しいですが、苦い経験があります。
 私の書いた文章が、こちらの意図とは違う受け取り方をされてしまったのです。
 メールは難しいですね。以来、大事なメールは書いた後で読み直し、時間を置いて再び読み直してから(必要なら修正して)送るようにしています。

 正しく伝える、表現する、というのは時に本当に難しいです。

 例えば、人間は安心を求めます。女性の脳はセロトニンの分泌量が男性の3分の2といわれており、一般的に女性の方が心配性です。夫や子供を愛しているので心配の思いが湧き、それが一言多い言葉となって出てしまいがちです。
 うっとうしがられても、不機嫌になられても、言ってしまうことが多いのではないでしょうか。

 心配されると夫や子供は信頼されてないと感じます。愛が愛として伝わらず、「あなたのことを信じていない」というメッセージになってしまうのです。

 さらに、本田健さんは著書『60代にしておきたい17のこと』の中で、心配についてこんな怖いことを言っています。

 心配の本質は、ネガティヴな未来をイメージして、それが必ず起きると確信することです。一種の「呪い」だといってもいいでしょう。
 …現実にあなたの心配したとおりになります。
 心配は、愛の仮面をかぶった呪いです。
 「心配は、ダメな未来を相手に押しつける行為だ」ということを忘れないでください。

 愛から発したはずなのに呪いになってしまうとは…!

 「信じられていない」と感じるのは悲しいですね。
 愛を「信頼」という形で届けるよう心掛けましょう。
 神様から与えられた互いの創造本性(善性)を信じる中でこそ、強い絆(きずな)は築かれていきます。