世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

G20サミット、予想外の二つの出来事

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は6月24日から630日までを振り返ります。

 この間、国内外で以下のような出来事がありました。
 米、国防長官代行にエスパー氏が就任(24日)。米制裁、イラン・ハメネイ氏らの資産凍結(24日)。衆院本会議、内閣不信任案を否決(25日)。G20サミット・大阪が開幕(28日)。米中首脳会談、追加制裁関税先送りへ(29日)。G20閉幕(29日)。米大統領、初の南北軍事境界線を越えての米朝首脳会談(30日)、などです。

 今回は、日本で初開催のG2020カ国・地域)首脳会議(サミット)について説明します。
 大阪で628日から2日間の日程で開催され、29日、「大阪首脳宣言」を取りまとめて閉幕しました。

 閉会セッションで発表された首脳宣言には、昨年のサミットで削除された「保護主義と闘う」という表現は復活しませんでしたが、自由貿易の基本原則を再確認したものでした。

 「自由で公平、無差別、透明、予測可能で安定した貿易および投資環境を実現し、市場を開放的に保つよう努力する」と明記され、米中両国に自制を促す内容になっています。

 安倍首相のリーダーシップに海外首脳は感謝の意を表しました。

 この間、驚いたことが二つありました。一つは、トランプ氏がファーウェイに対する禁輸措置緩和の意向を示したことです。

 サミットに並行して行われた米中首脳会談に世界の注目が集まっていました。米中首脳は、米国の対中「第4弾」追加関税を当面は課さない、中断した貿易協議を再開する、中国は(米国の)食品や農産物を大規模に購入する、ファーウェイに対する米当局の禁輸措置に関しては「米国企業はファーウェイに部品を売ることができる」として禁輸措置の緩和を検討する、ことなどで合意したのです。

 しかし、トランプ氏は記者会見で「ファーウェイを禁輸措置対象のリストから外すかどうかについては、まだ中国の習近平国家主席と話していない。われわれが抱えている安全保障上の問題が最優先だ。ファーウェイの問題は複雑なので最後まで残すことにした。貿易協議がどうなるかを見ていきたい」とも語っています。実際はこれまでと変わらない、というのが現状です。

 もう一つ驚いたことは、トランプ氏が29日、翌日(30日)に朝鮮半島の軍事境界線がある非武装地帯で金正恩委員長と会う用意があるとツイッターで表明したことです。
 同日、トランプ氏は「私のツイッター見ましたか?」と文在寅大統領に話し掛け、親指を立てて「一緒に努力しよう」と語ったのです。

 北朝鮮の崔善姫第一外務次官は同日、トランプ氏の呼び掛けを「非常に興味深い」とする談話を発表し、実現するなら「両首脳間の親交を一層深め、両国関係の進展で意味ある契機になる」と評価する考えを表明したのです。

 翌30日、米韓首脳会談後に両首脳は板門店に向かいました。トランプ氏は金正恩氏と会い、米大統領として初めて北朝鮮領内に入りました。その後、韓国領内の「自由の家」で1時間余りの3回目の米朝首脳会談(文大統領は参加しなかった)を行い、数週間以内の実務者協議の再開を約束したのです。

 米中の決裂が回避されたことは歓迎すべきことであり、米朝首脳会談が異例の形であれ開かれ、協議の再開が合意されたことも評価すべきです。しかし、大統領選挙を控えたトランプ氏の「演出」との一面も加えて見ておくべきでしょう。