青少年事情と教育を考える 57
行政全体で「誰もが行きたくなる学校づくり」

ナビゲーター:中田 孝誠

 近年、子供たちの健全な成長のため、学校と家庭と地域社会の連携や小中学校の連携の重要性などが叫ばれています。
 今回はそうした取り組みの一つとして行われている、岡山県総社市の「誰もが行きたくなる学校づくり」事業を紹介します。

 同市では、平成22年度からこの事業に取り組んでいます。きっかけは不登校対策でした。市では不登校の出現率が長期にわたって全国平均を上回っていました。

 市では不登校対策というだけでなく、全児童・生徒の成長や相互理解を深める教育実践として始めました。
 大きな特徴の一つは、学校と家庭はもちろん、地域社会、そして幼稚園・保育園から小中高大、行政全体で連携して行っているところにあります。

 具体的には、スクールカウンセラーなどを含めたチームによる対応、ピアサポート(児童・生徒が互いに支え合う)、欠席の管理による早期介入、SEL(社会性・対人関係のスキル、情動の学習)、品格教育などを行っています。

 品格教育は、「挨拶」や「思いやり」など品格に関わる行為を月ごとのテーマとして設け、子供たちに良い行動とは何かを伝えます。そして子供自身が目標行動を考え、繰り返し実践することで、良い習慣を定着させながら、規範意識を向上させるというものです。

 こうした取り組みの積み重ねもあってか、事業が始まって7年ほどの間に市の不登校出現率は、中学校が平成22年の3.63%から28年には1.63%に低下しました。全国平均は3.01%です。小学校も0.45%から0.38%に低下しました。全国平均は0.48%です。
 また、総社警察署管内の中学生の検挙・補導数は、22年の121件から、29年は17件に減少しています。

 まさに「誰もが行きたくなる学校づくり」が地域全体で進められているというわけです。