夫婦愛を育む 58
「…だけでは情は育たない」

ナビゲーター:橘 幸世

 今年1月に李耀翰(ヨハネ)先生が聖和(逝去)されました。
 信仰を持って間もない頃、私は先生の著書『信仰と生活』を一生懸命読んでいました。とりわけ、復帰摂理の中心人物を取り上げての内容にひかれていました。

 そんな20代のある時、先生の講話を松濤本部で聞く機会がありました。一言も漏らすまいと一生懸命聞く中で、特に印象に残った一点があります。

 正確な言葉は覚えていませんが、「摂理には神が働く。だから摂理を進めるために活動すれば、神が働き結果は出る。けれど、結果が出たからと言って、それだけで心情が育つわけではない」という内容で、心にストンと入りました。

 1990年代、私がヨーロッパにいた当時、お父様(文鮮明先生)の一番弟子・金元弼先生が顧問のような立場でおられて、ヨーロッパのメンバーからとても慕われていました。
 先生がリーダーズ・ミーティングで語ってくださる内容は(私が聞いた限り)毎回同じものでした。

 夫も妻も、み旨(教会の活動)や仕事が終わって家に帰ったら、それで一日が終わりではない。もう一つの大事な仕事が待っている。夫として父として、妻として母として、家族を愛することだ、それをしっかりやりなさい、というものでした。
 私が所属する教会にいらしてくださった時も、説教の内容はやはり夫婦愛を育むことでした。

▲若き日の金元弼先生(中央手前)

 それまでの功績に対してお父様が元弼先生を表彰された時、先生は家に帰って、その賞状を逆さにして奥さまに渡されたそうです。奥さまのおかげで表彰された、奥さまから頂いた賞状だ、と感謝をそのような形で伝えられたのです。

 先生が聖和される前に最後の願いとしておっしゃった言葉を息子さんが紹介されています。
 「私が死んで、(先に聖和した)お母さん(鄭達玉先生)と一緒に合葬するときに、ほかに何も必要ない、『元弼の妻・達玉、達玉の夫・元弼』とだけ書いてくれ。墓石も要らないし、私の生涯も書く必要はないし、私の敬称も書く必要がない。私が持っていくものは、神様の愛と、愛する私の妻だ」(『世界家庭』2017年6月号より)
 まさに「天国」=「二人の国」の境地ではないでしょうか。

 ややもすれば、私たちは忙しさの中で(あるいは忙しさを言い訳にして)「もう一つの大事な仕事」をおろそかにしてしまうことがあるかもしれません。そんな時、立ち止まって自分を振り返り、神様と向き合い、家族と真摯(しんし)に向き合う時間を持つよう、心掛けていきたいものです。