青少年事情と教育を考える 55
中学校の道徳教科書

ナビゲーター:中田 孝誠

 新年度から中学校で道徳の教科化(特別の教科 道徳)が始まります。すでに小学校では今年度(昨年4月)から実施されていますが、それに続くものです。

 教科ですから教科書があります。中学校は8社の教科書が検定に合格しています。以前にも書きましたが、教科書には家庭の愛情をテーマにした題材が多く入っています。

 改訂された学習指導要領には、教える内容項目として、「個性の伸長」や「善悪の判断、自律、自由と責任」などとともに「家族愛、家庭生活の充実」があります。

 「父母、祖父母を敬愛し、家族みんなで協力し合って楽しい家庭をつくること」(小学3、4年)、「父母、祖父母を敬愛し、家族の一員としての自覚をもって充実した家庭生活を築くこと」(中学)というように学習項目を定めていて、教師はこれに沿って授業を行うわけです。

 また、「思いやり、感謝」として、「日々の生活が家族や過去からの多くの人の支え合いや助け合いで成り立っていることに感謝し、それに応えること」とも記されています。

 各社の教科書の教材名を挙げると、「君が生まれた日」「母はおしいれ」「家族と支え合うなかで」「ごめんね、おばあちゃん」といった話が掲載されています。

 一方、8社中4社でLGBT、性的少数者について取り上げています。高校の家庭科の教科書などには取り上げられたことがありますが、中学生では初めてです。

 このうち一社では、性の在り方には「からだの性」「こころの性」「好きになる性」の三つの要素がある、と紹介しています。項目としては「公正、公平、社会正義」として扱われています。

 道徳教科化の大きな契機になったのは、いじめの問題でした。その意味でLGBTに限らず、授業でいじめや差別がなくなっていけば、大きな成果です。ただ、現状はLGBTの人たちへの配慮ということ以上に、「性の多様性」を教えることが強調されています。そうなると発達段階の子供たちに自分の性に対する混乱を与えかねません。

 こうした点からも、4月からの中学校の道徳授業に注目する必要があります。