共産主義の新しいカタチ 119

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

米流批判理論の見たフロム「母権論」
エーリッヒ・フロム(下)➁

同性愛を認めないとしてフロムを糾弾
 さて、こうした社会的背景には、「セクシュアリティーの多様化」「マイノリティーの権利保護」という思想・理論が「主流」となっている感があります。米国でフランクフルト学派の批判理論とポストモダン思想に連なるフェミニズムの立場は、フロムをどのように見ているのでしょうか。

 『アメリカ批判理論の現在』の第8章「フロム、フェミニズム、そしてフランクフルト学派」を執筆したダグラス・ケルナー氏は「フェミニズム的マルクス主義やジェンダーの社会的に構成された本性に関するポスト構造主義的な分析を生み出す最近の試みを先取りしていた」と評価し、さらにモーガンやエンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』に多大な影響を与えたバッハオーフェンの『母権制論』に関する論文では、「マルクス主義的社会主義と母性的文化とを等号で結ぶフロムの試みについては多分議論のあるところであろうが、他方、女性の解放に関する彼の関心と父権制に対する彼の攻撃には注意が払われるべきである」と評価しています。

 これら1940年代前半までの研究は評価できる反面、戦後、特に『愛について』などでは男性と女性のセクシュアリティーの捉え方(フロムは生物学的な性的差異の分析を性行為における男性と女性とのあいだの顕著な差異と考えた)が、「異性間の性交をセクシュアリティーのモデルとして前提している」とし「堕落した」と断じています。つまり「同性間性愛」も考慮されなければ、「セクシュアリティー多様化」の「時代に合わない古い思想」と主張したいわけです。

バッハオーフェンの影響とマルクス主義
 さてここで、フロムの思想に立ち戻ってみましょう。前回で「バッハオーフェンを援用したフロム」として『アメリカ批判理論の現在』の一部を引用していますが、ここでもう少し、バッハオーフェンの『母権制論』について言及してみましょう。

 ヨハン・ヤーコプ・バッハオーフェン(18151887)は、スイスの文化人類学者、社会学者で元来は歴史法学派のサヴィニーに強く影響を受けた法学者でしたが、古代法の研究から転じて古代社会についての著作を発表して文化人類学に多大な影響を与えました。特に、古代においては「婚姻による夫婦関係は存在しなかった」とする「乱婚制論」や、「母権制論」を唱えました。

 バッハオーフェンの研究はルイス・H・モーガンにより発展・継承され、エンゲルスによる『家族・私有財産・国家の起源』に大きな影響を与えました。同書の序文でエンゲルスはバッハオーフェンに言及しました。更にヴァルター・ベンヤミン、フロム、トーマス・マン等に多大な影響を与えたといわれます。

 バッハオーフェンによれば、社会は「文化進化の4段階」を経るとしました。

①母権制前の「原始乱婚」段階。プロトアプロディーテを土着の支配神とした。

②母権制。常習的神秘的カルトと法の出現と一夫一婦制で且つ女性支配の「月の段階」。デメテルを支配的神と考えた。

③ディオニシアン。家長制度が誕生し始め父権化。ディオニュソスを支配的神と考えた。

④アポロニアン。過去の母権制やディオニシアンなどの痕跡が消え、現代の文明が出現してきた父権的な「太陽の」段階(太陽神アポロンが支配神)。(「ウィキペディア」参照)

 こうした「原始乱婚」から「母権制」、「一夫一婦制」へとの「神話」はもちろん、マルクス主義の「家族論」である『家族・私有財産・国家の起源』でも当然のように踏襲されています。

 しかしながら、このバッハオーフェンの「母権制」を軸とする「家族形態の4段階」モデルは後に、実証主義から反論が出されると影響力を失いました。

 とは言うものの、フロムはあくまでバッハオーフェンの「母権制」という「母性原理」をベースに、自らのフェミニズムとジェンダー論を構築していきます。

(続く)

「思想新聞」2026年7月1日号より

ウェブサイト掲載ページはコチラ

【勝共情報】
国際勝共連合 街頭演説
(国際勝共連合 公式チャンネルより)
「安倍元首相追悼:警告! 中国軍事戦略の転換点」202678日 高田馬場駅

LINE勝共ラシンバン】
友だち追加、お待ちしております。
友だち追加はこちら↓