魚谷さんの宗教講座 5
仏教編⑤
因縁生起、諸行無常、色即是空

ナビゲーター:魚谷 俊輔(UPF-Japan事務総長)

 お釈迦様が菩提樹の下で悟った「真理」は、「縁起」の理法であるといわれています。
 この世のものは全て「因」(直接的原因)と「縁」(間接的原因)によって発生すると教えています。

 この「因」と「縁」を合わせて「因縁」といいます。「因縁」というと、ちょっとおどろおどろしいイメージがありますが、もともとお釈迦様が言った「因縁」というのは、原因があって結果が生ずるという、極めて合理的な話です。
 すなわち、「因」+「縁」=「生起」(結果)ということで、これを「因縁生起(いんねんしょうき)」といいます。

 次に「諸行無常」です。世の中の一切の現象、万物は、常に変転してやむことがないという意味です。
 それが後に発展して、「空(くう)」という教えになります。この「空」の教えあたりになると、一般人に理解できるのかなと思うくらいに哲学的な教えになります。

 「色不異空 空不異色 色即是空 空即是色」は、「般若心経」の中の非常に有名な一節です。
 「色不異空 空不異色」は「しきふいくう くうふいしき」と読み、「色は空に異ならず 空は色に異ならず」と読み下すことができます。

 これはもともとあったサンスクリット語の原典を三蔵法師が訳した結果、この漢字になったということです。
 日本の読経ではこれが一般的に用いられていますが、これだけでは意味がよく分かりませんね。

 中村元(はじめ)という仏教学の大家が、サンスクリット語の原典から現代日本語に訳すとこういう意味だということで訳したものが以下のような内容になります。
 「色不異空」とは、「この世においては、物質的現象には実体がないのであり、実体がないからこそ、物質的現象で(あり得るので)ある」ということです。
 非常に哲学的ですね。

 そして「空不異色」とは、「実体がないといっても、それは物質的現象を離れてはいない。また、物質的現象は、実体がないことを離れて物質的現象であるのではない」という意味です。

 何を言っているのかよく分からないですね。おそらく、物理学を学んで量子力学などを極めた人は、「これは真理だ!」と分かるのではないかと思われるくらいに、哲学的な内容です。

 「般若心経」の中で一番有名な一節が、「色即是空 空即是色」(しきそくぜくう くうそくぜしき)です。
 「色はすなわちこれ空 空はすなわちこれ色なり」ということですが、これを中村元氏は現代日本語に直して「(このようにして、)およそ物質的現象というものは、すべて、実体がないことである。およそ実体がないということは、物質的現象なのである」としています。

 一般人の感覚からすれば、どっちなのかよく分からないということになるだろうと思います。
 これを通して何が言いたいかというと、実は「諸行無常」ということです。
 われわれが普段執着している物質的現象というものも、実は人間がこだわるほど堅固なものでも、永遠のものでもないから、そういうものに対するこだわりを棄(す)てましょう、ということが言いたいのです。

(次回に続く)