世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

中露の日本への軍事的圧力、日米の戦略共有が不可欠

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、128日から14日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 香港議会選挙、親中派が独占(128日)。中露の爆撃機が日本周辺を共同飛行実施(9日)。オーストラリア、16歳未満のSNS禁止法を施行(10日)。ベネズエラのマチャド氏、ノーベル平和賞受賞式のためオスロに到着(11日)。日米防衛相が電話会談、「レーダー照射は深刻な懸念」(12日)、などです。

 12月9日深夜、防衛省統合幕僚幹部は、中国軍機H6爆撃機2機とロシア軍機TU95爆撃機2機が同日、日本周辺を共同飛行したと発表しました。
 日本周辺海域では中国軍の空母「遼寧」が運航し、中国空母と同時に中露爆撃機が展開するのは初めてのことでした。

 両軍機は東シナ海上空で合流し、宮古海峡を通過して太平洋に進出したところで針路を変え、四国沖まで展開しましたが、その後同じルートを引き返したのです。もし直進すれば、横須賀基地に接近したでしょう。

 12月6日には、中国の空母「遼寧」を発艦した戦闘機「J15」が、2回にわたってスクランブルをかけた自衛隊機「F15」に対してレーダー照射を行いました。登載されているレーダーには二つの機能があり、一つは捜索用、もう一つは火器管制用です。

 2度目のレーダー照射は火器管制用で、約30分間、断続的に行われました。火器管制用レーダーによる照射は「ロックオン」といい、ミサイルを発射して迎撃するための準備動作なのです。極めて深刻な軍事的挑発行為です。

 自衛隊機の中にはロックオンされた時に発するけたたましい音が響いていたことでしょう。冷静に対処した航空自衛官をたたえたいと思います。

 事の発端として高市早苗首相の「存立危機事態発言」(117日)が挙げられ、中国への「挑発」だったと批判的に論じられることがあります。

 とんでもありません。高市首相は当たり前のことを述べただけです。
 安倍晋三元首相はもっと踏み込んだ発言をしていました。「台湾有事は日本有事」がそれです。

 中国にとって台湾統一は「核心的利益中の核心」であり、いかなる手段を用いての統一(武力統一を含む)であっても、外国勢力による干渉を許さない環境をつくり上げようとしています。
 そのための情報戦、法律戦、認知戦、世論戦を建国(1949年)以来展開してきたのです。

 ソ連を共通の敵とする米中接近を契機として、米国の協力を得て中国が国連加盟を果たしたのが1971年でした。国連決議2758によって実現したのです。

 その内容は「中華人民共和国の一切の権利を回復し、中華人民共和国の代表が国連における中国の唯一の合法的な代表であることを承認する」というものです。

 国連常任理事国は中華民国から中華人民共和国に代わり、中華民国は国連を脱退しました。
 重要なことは、この決議は中華人民共和国の代表権を処理しただけであって、中華民国と国連の間の問題を処理しておらず、台湾(国連から見れば中華民国は台湾地域となる)にも、台湾の政治的地位にも言及していないのです。すなわち、台湾は中華人民共和国の領土の一部であるなどという主張の根拠はないのです。

 米国は1979年、「台湾関係法」を制定し、台湾への武器供与を約束するとともに、台湾が武力侵攻を受けた時には「対抗」することを明記しています。

 中国が武力行使をしなければ米軍は台湾周辺に向けて動くことはありません。
 そして「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」である「存立危機事態」となることもないのです。日本が中国に武力侵攻を仕掛けるわけではないのです。

 中国は戦略的に動いています。
 今の米国の立場を10月末の米中首脳会談で確認したのでしょう。レアアースの急所を抑えるとともに、来年は米国の中間選挙です。米国の対中攻勢はありません。今が、日本に軍事的挑発をするチャンスなのです。

 米国の姿勢の一時的変化に日本は動揺してはいけません。米国は中国に「対峙」する準備をしているのです。
 今こそ中国の対日工作の全てが、「日米離間」にあることを肝に銘じるべきです。

 日米の戦略共有が不可欠です。



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