ほぼ5分で読める統一運動 72
人類一家族世界の実現を目指す統一運動

稲森 一郎

 統一運動でいう「超宗教」「超国家」は、現代社会がよく使うところの「グローバリズム」という概念と同じ意味なのかという疑問が生じますが、完全に同じというわけではありません。

 一般に使われる「グローバリズム」は、主として、経済的な用語として用いられています。
 「ヒト」「モノ」「カネ」「サービス」が国境を越えて自由に行き交う世界をつくるという意味で使われています。

 その実験を大々的に行ったのが、EU(欧州連合)です。
 超国家で国境を取り除いたような形になったのはよいとして、アラブ世界からの大量の移民である「ヒト」の流入が、安い賃金で働くアラブ系の人々を抱えることになり、ヨーロッパ人から職を奪っていく現象は由々しき事態でした。

 その結果、EUは大混乱に陥り、現在に至るまでEUの苦悩は続いています。
 安価な人件費によって利益を上げようとする企業のやり方が、結果としてEU諸国の葛藤と混乱を招いています。

 また、「カネ」が自由に国境を越えて動くとなると、それは、金融グローバリズムと言ってもよい経済的概念になります。

 資本主義の特徴は、銀行、保険会社、証券会社などの金融機関が街に並び立つ世界であり、金融が大きな力を持っている社会です。
 金融グローバリズムの限界を指摘する声が広がってきていますが、その理由は格差社会をつくった大きな原因として金融至上主義が責任を負っていると見られるようになったからです。

 21世紀の金融グローバリズムにおいて、投資ではなく、投機となった株式市場のマネーゲームの世界、倫理観を失った金銭至上主義の弊害が露あらわになってきたことを見る時に、良心的な人々はお金と物質に偏り過ぎた極端な世界をそのまま認めることはできないでしょう。

 欧米と日本などの先進諸国が金融グローバリズムの旗印の下で、金融エリートたちが富を独占していくことに、人々は疑問を覚えるのです。
 これでは、精神的な幸福と物質的な幸福を調和的に実現する道がなく、金銭万能主義、物質偏重の社会に陥っていきます。

 エマニュエル・トッドが『西洋の敗北』(2024118日出版)の中で、アメリカは「モノではなくドルだけを生産する」国家になり下がったと言っているのは、結局、金融グローバリズムの行き着くところの姿がそういう姿なのであると言っているのです。
 トランプはこのいびつな国家になったアメリカを再びまともな姿に戻し、健全なアメリカにつくり変えようと必死に戦っています。

 文鮮明(ムン・ソンミョン)・韓鶴子(ハン・ハクチャ)夫妻が主導する統一運動は、経済に偏ったグローバリズムではなく、心と体の調和が人間の理想の姿であるように、精神的価値と物質的価値の両面の価値が調和する世界を実現することを目指しています。

 対立闘争する世界ではなく、世界の人々が同じ倫理的価値観を共有し、家族のように愛し合い、助け合い、理解し合うことによって、心身両面の喜びと幸福を実現する世界です。
 最終的には、人類一家族世界となる究極の目的に向かっているのです。

 そのような意味において、経済グローバリズムからの脱却を図り、人類は今や、真の愛のグローバリズムに立脚しなければならないといえるでしょう。
 人類が一つの家族になるという最終地点を見つめて、統一運動はその力強い歩みを続けています。